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労災認定の重要なポイント!「業務遂行性」と「業務起因性」って何?

はじめに

「会社の倉庫で作業中に、重い荷物が足の上に落ちてきて骨折した」
「上司の厳しい叱責が毎日続き、うつ病と診断されてしまった」

これらは、どう考えても仕事が原因の怪我や病気であり、当然、労働災害(労災)として認められるはずだ、と多くの方が思うでしょう。しかし、場合によっては「労災ではない」と判断されてしまうケースも存在します。

なぜ、仕事中に起きた災害であるにもかかわらず、労災と認められないことがあるのでしょうか。その成否を分ける、最も重要な法的キーワードが「業務遂行性(ぎょうむすいこうせい)」と「業務起因性(ぎょうむきいんせい)」です。

この2つの言葉は、労働災害の認定手続きにおいて、避けては通れない重要な判断基準です。この記事では、この専門用語の意味を、具体的な事例を交えながら、どなたにも分かりやすく解説していきます。この2つのカギを理解することで、ご自身のケースがなぜ労災と認められるべきなのか、またはなぜ判断が難しいのかを、深く理解できるようになるはずです。

業務災害認定の絶対的基準

「業務遂行性」と「業務起因性」

労働災害のうち、仕事そのものが原因で発生する「業務災害」と認定されるためには、その災害が「業務上の事由」によって生じたと認められなければなりません。

そして、この「業務上の事由」にあたるかどうかを判断するために用いられるのが、以下の2つの基準です。この2つは、両方が満たされて初めて「業務災害」と認定される、いわば車の両輪のような関係です。

  1. 業務遂行性
    その災害が、労働者が事業主の支配・管理下にある状態で発生したこと。
  2. 業務起因性
    その災害が、業務に内在する危険が現実化したものと認められること(業務との間に相当な因果関係があること)。

簡単に言えば、「①仕事中であり(業務遂行性)、かつ、②仕事が原因で(業務起因性)」起きた災害である必要がある、ということです。それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

【第1の関門】業務遂行性とは?

事業主の支配下にあったか

業務遂行性とは、災害が発生したときに、あなたが事業主(会社)の管理下にあったかどうかを問うものです。これは、以下の3つのパターンに大きく分けられます。

① 事業場内(会社の中)で業務に従事している場合

これは最も典型的で、業務遂行性が認められやすいパターンです。

  • 工場のラインで組立作業をしているとき
  • オフィスのデスクでパソコン作業をしているとき
  • 店舗で接客をしているとき

これらはすべて事業主の支配・管理が強く及んでいる状況であり、業務遂行性は問題なく認められます。

② 事業場外(会社の外)で業務に従事している場合

出張や営業での外回り、あるいは在宅勤務(テレワーク)など、会社の外で仕事をしている場合も、業務遂行性が認められます。

  • 営業担当者が社用車で得意先に向かっているとき
  • 建設作業員が、会社の指示で工事現場に赴いて作業しているとき
  • 出張先のホテルで、会社の業務として報告書を作成しているとき

これらのケースでは、場所は会社の外ですが、事業主の命令を受けてその管理下で業務を行っていると評価されるため、業務遂行性が認められます。ただし、業務から外れて私的な用事を済ませている間(逸脱・中断)は、業務遂行性が否定されます。

③ 業務に付随する行為、準備・後始末行為中

直接的な業務そのものではなくても、業務を行う上で通常必要となる行為中も、事業主の管理下にあるとされます。

  • 始業時間前に、作業服に着替えたり、道具の準備をしたりしているとき
  • 終業後に、職場の清掃や片付けをしているとき
  • 業務の途中で、トイレに行ったり、水を飲んだりする生理的行為のとき

これらの行為も、業務と密接に関連しているため、業務遂行性が認められます。

 

【重要ポイント】休憩時間中の災害の扱い

休憩時間や昼休みは、労働から解放され、労働者が自由に利用できる時間です。そのため、原則として事業主の支配下にはなく、業務遂行性は否定されます。

例外

ただし、休憩時間中であっても、その災害の原因が事業場の施設・設備の不備や欠陥にあった場合は、例外的に業務遂行性が認められます。

  • 認められる例
    会社の食堂の床が、清掃不備で濡れていて滑り、転んで骨折した。
  • 認められる例
    会社の休憩室の古い椅子が突然壊れて、転倒し負傷した。

これらのケースでは、たとえ休憩中であっても、事業主が管理する施設の安全性が保たれていなかったことが原因であるため、事業主の支配が及んでいると評価され、業務遂行性が認められるのです。

【第2の関門】業務起因性とは?

業務との間に因果関係があったか

業務遂行性が認められた上で、次に検討されるのが「業務起因性」です。これは、その災害が、仕事内容や職場環境に潜む危険が原因となって発生したといえるか、つまり業務との間に合理的な因果関係があるかを問うものです。

いくら会社の管理下(業務遂行性あり)で起きた災害でも、業務と全く関係ない私的な行為が原因であれば、業務起因性は否定されます。

業務起因性が「肯定」される例

  • 業務行為に起因
    プレス作業中に機械に手を挟まれた。フォークリフトの運転操作を誤り壁に激突した。
  • 事業場の施設・設備に起因
    老朽化した会社の階段が崩れて転落した。化学工場の有害物質を吸い込み中毒になった。
  • 過重な業務に起因
    月100時間を超える残業が続き、脳梗塞で倒れた(過労死ライン)。上司からの執拗なパワハラが原因で、適応障害を発症した。
  • 天災地変時の例外
    通常、地震や台風は業務と無関係ですが、例えば「災害時に顧客の避難誘導を行うよう義務付けられていたビルの警備員が、地震で落下してきた看板にあたり負傷した」など、業務の性質上、危険な状況にさらされる度合いが高かった場合には、業務起因性が認められることがあります。

業務起因性が「否定」される例

  • 私的行為・遊戯が原因
    昼休みに同僚とキャッチボールをしていて、ボールが顔に当たり負傷した。(業務遂行性も否定される可能性が高い)
  • 個人的な怨恨による暴行
    就業時間中に、業務とは全く関係のない個人的な恨みを持つ同僚から暴行を受け負傷した。
  • 意図的な行為(故意・自傷行為)
    労働者がわざと機械に手を入れるなどして自らを傷つけた場合や、自殺行為。(ただし、業務による強度の心理的負荷が原因で正常な認識ができない状態で自殺に至った場合は、業務起因性が認められることがあります)
  • 規律違反行為が原因
    会社が禁止している危険な近道(線路の横断など)を勝手に行い、事故に遭った場合。

このように、業務災害の認定は、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つのフィルターを通して、慎重に判断されるのです。

 

まとめ

認定の判断は専門的。自己判断せずにご相談を

今回は、業務災害を認定する上での2つの重要なカギ、「業務遂行性」と「業務起因性」について解説しました。

  • 業務遂行性とは、「事業主の支配・管理下にあったか」を問うもの。
  • 業務起因性とは、「業務との間に因果関係があったか」を問うもの。
  • 業務災害と認定されるには、この両方を満たす必要がある。

これらの判断は、過去の多くの裁判例や認定基準に基づいて行われる、非常に専門的な作業です。特に、休憩時間中の事故、精神疾患の発症、持病の悪化が業務で誘発されたケースなど、判断が難しい事例は数多く存在します。

労働災害に遭われた方が、「これは業務と関係ない私的な行為中だったかもしれない」「会社の施設が原因とは言えないかもしれない」などと、ご自身で不利に判断して申請を諦めてしまうのは、非常にもったいないことです。

あなたのケースが労災に該当するかどうか、その可能性を法的な観点から正確に判断するためにも、まずは労働災害に精通した専門家にご相談ください。私たち弁護士法人長瀬総合法律事務所は、被災された方の状況を丁寧にお伺いし、業務遂行性・業務起因性の観点から、労災認定の見通しや、認定を得るために必要な証拠についてアドバイスいたします。一人で悩まず、ぜひ一度、私たちにご相談ください。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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