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労働基準法と労災の関係

はじめに

日本の労働環境を支える主要な法律の一つに「労働基準法」があります。労働時間や休憩、賃金、休日など、働くうえで最低限守られなければならない基準を定めた法律ですが、「労災」とはどのように関連しているのでしょうか。

労働基準法は、単に給与や労働時間を定めているだけでなく、労働者が安全・健康に働くための義務を会社(使用者)に課している面があります。さらに、労働基準法を具体的にサポートする法律として、「労働安全衛生法」や「労働者災害補償保険法(労災保険法)」なども存在し、互いに連携をとることで労働者を保護する仕組みとなっています。

本稿では、労働基準法が労働災害とどう関わっているのか、またその適切な運用を怠った場合に会社はどのような責任を負うのか、そして労働基準監督署が果たす役割などをわかりやすく解説していきます。万が一、職場で労災事故が発生したときに、自分の権利を守り、適切な手続きを踏むためにも有益な知識ですので、ぜひご一読ください。

Q&A

労働基準法はどのように労災と関わるのですか?

労働基準法は、会社が労働者に対して負う「安全配慮義務」の根拠の一つです。たとえば危険作業の安全対策を怠るなどして労災事故が起きた場合、労働基準法違反として会社に刑事罰や行政処分が科されることもあります。

労働基準監督署は何をしてくれるところですか?

労働基準監督署は、労働基準法などの労働関連法令を監督・指導する行政機関です。労災事故が発生した場合の調査や、会社が法律を守っているかどうかの監督などを行います。労災保険の申請窓口としても機能し、被災者が給付を受けられるよう手続きを進める役割があります。

労働安全衛生法との違いは何ですか?

労働基準法が労働条件の最低基準(賃金・労働時間など)や安全配慮義務を規定している一方で、労働安全衛生法は「安全衛生管理体制の確立」「事業者の具体的な措置義務」など、安全に働くためのより詳細なルールを定めています。両方の法律が協働して、労災防止を図ります。

会社が労基法を守っていないと、どうなるのでしょうか?

違反内容に応じて、労働基準監督署から是正勧告や改善命令が出されるほか、悪質な場合は送検・罰金刑などの刑事処分が下されることもあります。被災者は、労基法違反を理由に損害賠償を請求する場合もあります。

安全配慮義務とはどんな内容ですか?

会社(使用者)が労働者の生命や身体を安全に守るため、危険源を取り除いたり安全教育を行ったりするなど、「労働者が安全・健康に働ける配慮」をする義務のことです。これを怠ると、労災事故が起きた際に会社が責任を問われる可能性が高くなります。

解説

労働基準法の目的と内容

労働条件の最低基準を定める

労働基準法は、賃金・労働時間・休憩・休日・休暇など、労働者の保護に欠かせない事項について最低限の基準を規定しています。違反すれば罰則があり、企業規模や業種に関わらず適用される点が重要です。

安全配慮義務の根拠

労働基準法には、直接「安全配慮義務」という言葉が出てくるわけではありませんが、労働契約法や判例などとあわせて読み解くと、会社が労働者の安全と健康に配慮する義務を負うことが明確になります。

これが不十分だと、職場の危険箇所を放置していたり、過酷な長時間労働を強要したりして労災が発生した場合、会社に法的責任が及ぶことになります。

労働基準監督署の役割

 法令違反の監督・指導

労働基準監督署は、厚生労働省の地方支分部局である「都道府県労働局」の下に置かれ、労働基準法や労働安全衛生法の遵守状況を監督します。

  • 臨検監督
    必要に応じて会社に立ち入り調査を行い、賃金台帳や労働時間管理などをチェックする。
  • 是正勧告
    違反が見つかったら是正指導を行い、改善されない場合は書類送検などの処分に踏み切ることもある。
労災保険の手続き窓口

労働者が業務災害や通勤災害でケガをした場合、その申請先となるのが労働基準監督署です。会社が手続きをしてくれない場合、労働者本人が直接手続きを行うこともでき、監督署が事実関係の調査などを進めます。

重大災害時の特別調査

死亡や重傷者が出るような重大な労災事故が起きた場合、労働基準監督署は会社に対して厳格な調査を行います。

  • 事故状況の把握
  • 安全管理体制の不備
  • 再発防止策の徹底

違反が確認されれば、刑事事件として経営者や管理者が立件されるケースもあります。

労災保険法・労働安全衛生法との関連

労働基準法と労災保険法の違い
  • 労働基準法
    労働条件の最低基準・罰則規定・安全配慮義務を中心とする。
  • 労働者災害補償保険法(労災保険法)
    業務・通勤中のケガや病気を補償するための保険制度を定める。

両者は互いを補完し合い、労働者の安全と補償の両面から保護しています。会社が労基法を守らず、安全措置を怠っていた結果、労災事故が起きれば、労災保険での補償に加えて会社が損害賠償責任を負うこともありえます。

労働安全衛生法との連携

労働安全衛生法は、職場の衛生・安全管理に特化した詳細なルールを定めた法律です。たとえば、

  • 安全衛生管理体制の整備(安全管理者・衛生管理者の選任 など)
  • 職場ごとの危険要因の抽出(リスクアセスメント)
  • 有害物質の取り扱いルール
  • メンタルヘルス対策(ストレスチェック)

などが義務づけられています。これらを怠れば労働基準法とあわせて違反となり、労災事故発生時には会社の過失が追及されやすくなります。

労災事故と会社の責任

安全配慮義務違反

会社が安全配慮義務を怠った結果、労災事故が起きたと判断される場合、会社は損害賠償責任を負う可能性があります。具体的には、

  • 逸失利益
    被災者が将来得られたはずの収入の一部
  • 慰謝料
    精神的苦痛に対する賠償
  • 治療費の自己負担分
    労災保険でカバーしきれない費用の補填

などを請求されることがあります。

刑事罰・行政処分

労働基準法や労働安全衛生法の重大な違反があると、会社や経営者、現場監督者などが50万円以下の罰金刑6か月以下の懲役刑などを科される場合があります。重大災害による死亡事故では、経営トップが書類送検されるニュースを目にすることも少なくありません。

増加する過労死・メンタルヘルス問題

安全配慮義務には、物理的な危険防止だけでなく、長時間労働の防止やメンタルヘルスケアも含まれます。過労死や精神疾患による労災認定が増加傾向にある中で、会社には適切な労働時間管理やハラスメント対策など、より広範な安全配慮が求められています。

万が一、過労やハラスメントが原因で精神疾患を発症した場合、会社の管理責任が明確になりやすく、労働基準法違反とあわせて厳しい責任追及を受けるリスクが高まります。

労働者がとるべき対応と実務上のポイント

  • 安全配慮に欠ける職場環境を感じたら
    早めに社内の相談窓口や管理部門に伝え、改善を求めましょう。それでも改善されない場合は、労働基準監督署に相談・通報することも選択肢です。
  • 労災が起きたら
    必ず会社に報告し、必要なら労働基準監督署に連絡します。会社が労災扱いを拒否する場合でも、労働者個人で申請が可能です。
  • 証拠の確保
    業務指示書・安全教育の有無・タイムカード・同僚の証言など、会社が安全配慮義務を怠っていた証拠を早めに確保しておくことで、後の補償や訴訟で有利になります。
  • 弁護士への相談
    会社が違反を認めず、損害賠償や不当解雇などの問題が生じる場合は、早めに法律の専門家へ相談し、適切な対処法を確認するのが得策です。

弁護士に相談するメリット

  1. 会社の違法行為に対処しやすくなる
    「残業代未払いや危険作業が放置されている」「労災事故が起きたのに会社が認めない」など、労働基準法や安全衛生法に違反する行為が疑われる場合、弁護士が法律知識と証拠整理をもとに会社と交渉し、問題解決を図ります。
  2. 損害賠償請求や示談交渉をサポート
    労災保険給付だけでは足りない損害(逸失利益や慰謝料など)を会社に求める場合、法的主張や示談交渉を行う必要があります。弁護士に依頼すれば、会社側の弁護士や保険会社との交渉も含めてサポートしてもらえます。
  3. 不支給決定などへの異議申立手続き
    労働基準監督署が不支給や低い後遺障害等級などの判断を下した場合でも、審査請求や再審査請求で争う余地があります。その際、弁護士が申立書の作成や証拠整理を手助けしてくれます。
  4. 労働訴訟の経験・判例知識
    過労死やハラスメント、重大災害などの労働事件は判例が豊富であり、実務に精通した弁護士は成功事例や類似判決を参照し、より効果的な戦略を立てられます。
  5. 精神的負担の軽減
    会社との直接交渉や法的手続きは精神的ストレスが大きいものです。弁護士に間に入ってもらうことで、被災者が治療や生活再建に集中できるメリットがあります。

まとめ

労働基準法は、労働者の権利を幅広く守るために設けられた最低基準の法律です。その中には、会社が守るべき安全配慮や、違反に対する行政処分・刑事罰の規定も含まれています。

労災事故が起きる背景には、会社が労働基準法や労働安全衛生法の規定を守っていないケースが多々見られます。転落防止措置の不足、長時間労働の放置、パワハラの黙認など…。そうした環境が原因で実際にケガや病気に見舞われた場合、会社は大きな責任を負う可能性があるのです。

被災した労働者は労災保険の給付を受ける権利があり、さらに会社の過失が明らかなら安全配慮義務違反による損害賠償も求めることができます。会社が「うちは労災じゃない」と言っても、それが正しいとは限りません。必要に応じて労働基準監督署や弁護士に相談し、正当な補償を獲得する道を検討しましょう。

  • 本記事は2024年12月時点の法律・制度をもとに作成しています。改正や判例の変更などで内容が変わる可能性があるため、実際の事案は専門家に直接ご相談ください。

解説動画のご紹介

労働災害でお悩みの方に向けて、労働災害に関して解説した動画をYoutubeチャンネルで公開しています。
「労働基準法ってどこまで適用されるの?」「安全配慮義務とは?」など、より噛み砕いた形で動画にまとめていますので、ぜひご覧ください。チャンネル登録もあわせてご検討いただけると幸いです。

【労働災害の動画のプレイリストはこちら】

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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