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2020年法改正|副業・兼業している人の労災はどうなる?知っておきたい新ルール

はじめに

「働き方改革」の推進や、社会経済状況の変化により、本業とは別に、もう一つの仕事を持つ「副業・兼業」が、特別なことではなくなってきました。収入を増やすため、スキルを活かすため、様々な理由で複数の会社で働く方が増えています。

しかし、ここで一つ、大きな疑問が生まれます。もし、副業・兼業をしている人が、仕事中に怪我をしてしまったら、労災保険の扱いはどうなるのでしょうか?

この疑問に対し、2020年9月1日に施行された改正労災保険法は、副業・兼業をする労働者にとって有利な新ルールを導入しました。

この法改正は、多様化する働き方の実態に即して、労働者保護を大きく前進させるものです。この記事では、副業・兼業をしているあなたが万が一の際に損をしないために、絶対に知っておくべき新ルールのポイントを、分かりやすく解説していきます。

【法改正前の問題】一つの会社の賃金しか評価されなかった!

新しいルールを理解するために、まずは法改正前の旧制度が、いかに副業・兼業者にとって厳しいものであったかを知っておく必要があります。

以前の労災保険制度では、休業(補償)給付などの給付額を計算する際、労災事故が発生した勤務先の賃金だけを基準にしていました。他の勤務先でどれだけ収入があっても、それは全く考慮されなかったのです。

具体例:旧制度の場合

  • A社(本業)で月収30万円
  • B社(副業)で週末に働き、月収8万円
  • この人が、B社(副業先)の業務中に事故に遭い、休業した場合…

このケースでは、労災の給付額は、事故が起きたB社の月収8万円だけを基準に計算されていました。しかし、実際には休業によってA社の月収30万円も得られなくなってしまいます。それにもかかわらず、その失われた収入分は一切補償されず、被災した労働者は深刻な経済的困窮に陥るという、大きな問題を抱えていたのです。

【2020年9月新ルール】全勤務先の賃金を「合算」して給付額を決定!

この問題を解消するために導入されたのが、2020年9月からの新ルールです。

新ルールの最大のポイントは、複数の事業場で働く労働者が被災した場合、すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎として、保険給付額を決定する、という点です。

具体例:新制度の場合

先ほどと同じ、A社(月収30万円)とB社(月収8万円)で働く人が、B社の業務中に被災した場合で考えてみましょう。

新ルールでは、A社とB社の賃金を合算した、「月収38万円」を基準として給付額が計算されることになります。これにより、失われた収入の実態に近い、手厚い補償を受けられるようになり、安心して療養に専念できる環境が整えられたのです。

この賃金合算のルールは、日々の生活を支える休業(補償)給付だけでなく、後遺障害が残った場合の障害(補償)給付や、万が一亡くなられた場合の遺族(補償)給付、療養が長引いた際の傷病(補償)年金など、給付額の算定に賃金を用いるすべての給付に適用されます。

【もう一つの重要改正】業務上の「負荷」の評価も総合的に判断

今回の法改正は、給付額の計算方法だけにとどまりません。過労死や精神疾患といった、過重な業務負荷が原因で発症する病気の労災認定においても、重要な変更がありました。

それは、脳・心臓疾患や精神障害の労災認定において、複数の勤務先での業務上の負荷(労働時間やストレスなど)を、総合的に評価して判断する、というルールです。

  • 労働時間
    A社での労働時間とB社での労働時間を通算して、国が定める過労死ライン(発症前1ヶ月に100時間超の残業など)に達しているかを判断します。
  • 心理的負荷(ストレス)
    A社での上司からのパワハラと、B社での顧客からのクレーム対応など、複数の職場で受けたストレスを総合的に評価して、精神障害の発症との因果関係を判断します。

これにより、これまでは「A社だけの労働時間では基準に満たない」といった理由で労災認定されなかったケースでも、複数の職場での負荷を合わせることで、労災と認められる可能性が大きく広がりました。

新ルールを利用するための注意点

この非常に有利な新ルールですが、利用にあたっては注意点があります。

  • 証明書類の準備
    申告の際には、複数の事業場で雇用されていることを証明する書類、例えば、それぞれの会社の雇用契約書や、給与明細の写しなどを提出する必要があります。
  • 対象となる災害
    この新ルールが適用されるのは、施行日である2020年9月1日以降に発生した傷病、障害、死亡です。それ以前の災害には適用されませんのでご注意ください。 

まとめ

副業・兼業者は、万が一の際に新ルールを思い出してください

2020年9月の労災保険法の改正は、副業・兼業という現代の働き方の実態に合わせ、労働者保護を大きく前進させた、非常に意義深いものです。

  • 給付額は、すべての勤務先の賃金を「合算」して計算される。
  • 過労死や精神疾患の認定では、すべての勤務先の「負荷」を総合して評価される。

あなたがもし副業・兼業をしていて、不運にも労働災害に遭ってしまった場合には、この新ルールを必ず思い出してください。そして、ご自身の権利を漏れなく主張するために、すべての勤務先の情報を正確に申告することが何よりも重要です。

もし、手続きの方法が分からなかったり、どの範囲の負荷が評価されるのか判断に迷ったりした場合は、詳しい専門家にご相談ください。私たち弁護士法人長瀬総合法律事務所は、複雑な法改正の内容も踏まえ、あなたが受けられるべき最大限の補償を受けられるようサポートいたします。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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