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【有害物質・化学物質による健康被害】職場でのリスクと労災対応、会社の責任

はじめに

工場での化学薬品の取り扱い、建設現場のアスベスト(石綿)作業、塗装作業における有機溶剤の使用など、有害物質・化学物質に接する機会は多くの職場で存在します。これらの物質は、人間の体に悪影響を及ぼす可能性があり、長期的には職業病となって表面化することもあります。

「化学物質が原因で肺がんを発症」「アスベスト作業を何年も続けていたら中皮腫を患った」「塗装作業で有機溶剤中毒を起こした」……こうしたケースは、労働災害(労災)として補償が受けられる可能性が十分にあります。会社は、労働安全衛生法などで定められた化学物質管理や作業環境測定、保護具の配備などを怠っていた場合、安全配慮義務違反を問われるリスクが高まります。

本稿では、有害物質・化学物質による健康被害の代表例や労災認定のポイント、会社が負う責任、さらに具体的な予防策や事故発生後の対応までを解説します。気づきにくい慢性的な被害も少なくありませんので、正しい情報と早期の相談が重要です。

Q&A

まず、有害物質・化学物質による健康被害について、よくある疑問をQ&A形式で整理します。詳細は後述する「3 解説」でさらに掘り下げます。

長期間にわたる粉塵・化学物質への曝露で生じた病気は労災になりますか?

はい。慢性的な曝露(ばくろ)によって発症する肺疾患や皮膚疾患、がんなども、業務上の原因が認められれば労災として補償される可能性があります。発症までに時間がかかる職業病は、認定の際に特定の要件を満たす必要があります。

急性中毒事故の場合は、すぐに労災を申請できるのですか?

できます。作業中に有機溶剤や酸・アルカリなどの化学物質を吸入・触れて中毒症状を起こしたり、火傷を負った場合は、業務災害として申請可能です。会社が「自己管理不足」と言ってきても、業務との因果関係が明確なら労災認定の可能性が高いです。

アスベスト(石綿)被害は発症までに何十年もかかると聞きましたが、今さら労災を申請しても大丈夫でしょうか?

アスベスト関連疾患(肺がん・中皮腫など)は潜伏期間が長く、数十年後に発症することが珍しくありません。発症後に労災申請すること自体は可能です。認定には労働者が過去にアスベスト作業に従事していた証拠や健康診断・診断書などが重要になります。

化学物質の管理責任は会社にあるのですか?

はい。会社(使用者)は労働安全衛生法等に基づき、化学物質のリスクアセスメントやラベル表示・SDS(安全データシート)の交付、作業環境測定などを行う義務があります。これを怠れば安全配慮義務違反となり、労災事故発生時に重大な責任を負う可能性が高いです。

会社が「健康被害は自己責任だ」と言って労災手続きを拒否してきたら?

有害物質による被害は業務との因果関係が認められれば自己責任にはなりません。会社が非協力的でも、労働基準監督署に直接申請できます。弁護士など専門家のサポートを得るとスムーズです。

解説

ここからは、有害物質・化学物質による健康被害の種類と特徴、労災認定の基準や会社の責任、発症時の対応などを深掘りしていきます。

代表的な有害物質・化学物質と健康被害

アスベスト(石綿)
  • 中皮腫・肺がん・アスベスト肺などを引き起こす。
  • 潜伏期間が20〜40年に及ぶことがあり、退職後に発症するケースも多い。
  • 建築物の解体作業、造船所などで石綿が大量に使われていた時代の労働者が後年に被害を受けている。
有機溶剤(トルエン・キシレン・アセトンなど)
  • 中枢神経障害・頭痛・めまい・吐き気・意識障害などを引き起こす。
  • 塗装作業や印刷業、接着剤製造などで使用。換気不十分、保護マスク未着用などにより高濃度の溶剤を吸入すると急性中毒を起こすリスクが高い。
酸・アルカリなどの腐食性薬品
  • 皮膚や粘膜への化学やけど、吸入による気道損傷・肺炎などを引き起こす。
  • 化学工場や研究所での取り扱い中、保護具を付けずに作業して事故になることが多い。
重金属(鉛・カドミウム・水銀など)
  • 鉛中毒による神経障害、貧血、鉛疝痛など。
  • カドミウムによる腎機能障害、骨軟化など。
  • 金属精錬作業や電池・塗料製造などでの防護対策不足により慢性的に被爆する。
粉塵(シリカ粉塵など)
  • じん肺(珪肺・石綿肺など)、肺がん、気管支疾患を起こす。
  • 採石場やトンネル工事、鉄鋼業などで発生する粉塵の吸入が主因。

労働安全衛生法の規定と会社の義務

化学物質管理とリスクアセスメント

労働安全衛生法は、化学物質リスクアセスメントを事業者に義務づけています。

  • SDS(安全データシート)の入手・周知:危険・有害性、取り扱い方法、応急措置などの情報提供。
  • ラベル表示:容器や包装に化学物質名や注意事項を明示。
  • 作業環境測定:有害物質の濃度を測定し、基準を超える場合は換気設備の強化や防毒マスクの使用を義務づける。
作業環境と保護具
  • 局所排気装置(ドラフトチャンバーなど)の設置
  • 保護具の支給・着用指導(防毒マスク、防護手袋、防護眼鏡、化学防護服など)
  • 定期健康診断:有害物質取扱作業者には特別健康診断を行う義務がある。

労災認定のポイント

業務上の曝露(ばくろ)が認められるか
  • 「どの期間、どんな物質にどれほどの量・濃度で触れていたか」を具体的に示す必要がある。
  • 勤務記録、作業日報、作業環境測定結果などが有力な証拠となる。
潜伏期間の問題
  • アスベストなど潜伏期間が長い物質の場合、退職後に発症することが多い。
  • 過去に従事していた職場での曝露が原因であれば、発症後でも労災申請が可能。認定には当時の雇用契約や作業内容の証明が必要になるため、資料や証言を収集することが重要。
医学的因果関係
  • 病状がどの化学物質によるものか、また私生活での喫煙や他の疾患との因果関係はどうか、といった医学的検証がカギ。
  • 専門医(呼吸器内科・産業医など)の診断書や意見書が大きな役割を果たす。

会社の安全配慮義務違反と責任

予防策の欠如

会社が法令で義務づけられたリスクアセスメントや作業環境測定を行っていない、保護具を支給していない、もしくは従業員に正しく着用させていなかったなどの場合、安全配慮義務違反とされる可能性が極めて高い。

  • 被災者は労災保険給付に加え、会社に対して逸失利益・慰謝料などの損害賠償を求めることができる場合がある。
従業員教育の不足

化学物質の危険性や取扱手順、防護方法をまったく教えずに作業させていたり、ラベル表示やSDSを共有していなかったりするのも、会社の責任が問われる典型例となる。

行政処分や刑事責任

重大事故が発生し、会社の違反が悪質と認められれば、書類送検や罰金刑などの刑事処分に発展することもある。労働基準監督署の是正勧告を受け、改善命令に従わない場合はさらなる処分が下されるリスクが高い。

事故・被害発生時の対応策

  1. 医療機関の受診
    急性中毒の場合は緊急対応を行い、症状が出ている化学物質を特定。慢性疾患の場合も専門医の診断を受け、業務上の可能性を示してもらう。
  2. 会社への報告と監督署への連絡
    会社が労災として認めなくても、被災者自身が監督署へ申請できる。アスベストなどの長期潜伏病は、退職後でも可能。
  3. 労災保険手続き
    療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付などを申請。
  4. 損害賠償請求の検討
    会社の安全配慮義務違反が明白であれば、逸失利益や慰謝料などを求める。弁護士のアドバイスを受けるとスムーズ。
  5. 再発防止策と作業環境改善
    会社側はリスクアセスメントの見直し、換気設備や保護具の拡充、従業員への追加教育などを行い、二度と同様の被害が出ないように対策を講じる。

弁護士に相談するメリット

  1. 業務起因性の立証サポート
    「有害物質の曝露が原因」と認定されるには、作業環境や発症した疾患の関係を詳細に立証する必要がある。弁護士は必要書類(SDS、作業記録、健康診断結果など)の整理や証拠収集をサポート。
  2. 会社との交渉・補償請求
    会社が責任を否定してきた場合、弁護士が介入し、安全配慮義務違反を根拠に示談や裁判での損害賠償交渉を進められる。
  3. 長期潜伏病への対応
    退職後に発症するアスベスト関連疾患などは、会社や当時の資料が散逸していることが多い。弁護士が証拠の捜索や証人確保を行い、労災認定と賠償請求へ導いてくれる。
  4. 不服申立・裁判対応
    監督署が不支給決定を下した場合、審査請求や再審査請求で争う道がある。複雑な専門知識を要するため、弁護士の支援が有効。
  5. 予防法務・企業側支援
    企業からの相談に応じ、法令遵守やリスクアセスメント体制構築、就業規則の改訂などを助言。未然に労災リスクを減らす取り組みに貢献する。

まとめ

有害物質・化学物質による健康被害は、すぐに症状が出る急性中毒から、長い年月を経て発症するがんや呼吸器疾患まで、多様な形で労働者の健康を脅かします。

こうした被害は、業務上の曝露が確認されれば、労災保険による補償を受けられるだけでなく、会社の安全配慮義務違反として損害賠償を請求することも可能です。特にアスベスト被害は潜伏期間が長く、退職後に病気が判明するケースが多数報告されていますが、発症した段階で労災申請・会社への責任追及を行うことが認められています。

会社側は、化学物質リスクアセスメントや作業環境測定、保護具の支給・着用徹底など、法律で定められた対策を行わねばなりません。違反していると、万が一事故や疾患が発生した場合に厳しい処分や賠償請求を受けるリスクがあります。

もし職場で有害物質を取り扱っており、体調不良や病気を感じた場合は、お早めに医師の診断を受け、弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へ相談することもご検討ください。正しい情報と法的手続きを踏めば、適切な補償や治療を受ける道が開けるはずです。

動画のご紹介

労働災害でお悩みの方に向けて、労働災害に関して解説した動画をYoutubeチャンネルで公開しています。ぜひご視聴いただき、チャンネル登録もあわせてご検討ください。

【労働災害の動画のプレイリストはこちら】

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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