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精神疾患(うつ病・適応障害)の労災認定基準|長時間労働やハラスメントがもたらす「心の労災」を正しく知る

はじめに

近年、長時間労働パワハラ・セクハラなどのハラスメント、職場環境の急な変化によって精神的ストレスが高まり、うつ病適応障害などの精神疾患を発症するケースが社会問題となっています。うつ病を発症し、自殺に至る「過労自殺」も過労死の一類型とされ、深刻な被害事例が報道されるたびに世間の注目を集めています。

こうした職場由来のストレスで発症した精神疾患についても、業務起因性が認められれば労災保険(労災)の対象となり、療養補償給付や休業補償給付などを受けられます。さらに、症状が重く後遺障害が残る場合には障害補償給付も検討される可能性があります。しかし、精神疾患は目に見えにくく、発症原因が多岐にわたるため、業務との因果関係を示すのが難しい場面も少なくありません。

本稿では、厚生労働省が示す精神疾患の労災認定基準を中心に、どのような状況下で精神疾患が労災認定されやすいのか、会社や監督署とのやりとり、実務上の注意点などを包括的に解説します。うつ病や適応障害などの精神疾患が疑われる場合、早期に正しい手続きを踏むことで労災保険の給付を活用し、適切な治療と休業補償を得られる可能性があります。

Q&A

まず、精神疾患(うつ病・適応障害)と労災保険の労災認定基準に関する代表的な疑問(Q)と回答(A)を簡潔にまとめます。詳細は「3 解説」で取り上げます。

Q1. 精神疾患も労災になることがあるの?

はい。仕事における強い心理的負荷が原因でうつ病や適応障害などを発症し、業務上のストレスと認められれば労災保険(労働災害)として認定されることがあります。

Q2. どんな基準で認定されるの?

厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を示しており、業務上の出来事の程度や残業時間などを総合評価して「強い心理的負荷」と判断されれば認定されやすいです。

Q3. 長時間労働だけでなく、ハラスメントも原因になる?

もちろんです。長時間残業がなくても、パワハラ・セクハラ・いじめなどの強い心理的負荷が精神疾患を引き起こした場合、労災認定されるケースがあります。

Q4. 会社が「本人の性格の問題」「自己責任」と言っても認定はされる?

監督署は客観的な事実(残業時間、ハラスメントの有無、職場環境など)で判断します。会社が否定しても、事実と合わなければ労災認定される可能性は十分にあります。

Q5. 精神疾患による後遺障害はどうなるの?

うつ病などで症状固定後も重い障害が残った場合、障害補償給付の対象となることもあります。もっとも、精神障害の後遺障害等級は厳しく判定される場合が多く、詳しくは医師の診断や監督署の判断が必要です。

解説

ここからは、精神疾患(うつ病・適応障害)に関して労災保険で業務上の病気と認定されるための基準や、長時間労働やハラスメントの具体例、会社・監督署とのやり取りのポイントなどを解説します。

厚生労働省の精神障害労災認定基準

心理的負荷による精神障害の認定基準

厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を公表しており、精神障害(うつ病、適応障害、統合失調症など)の発症が、業務上の強いストレスと時期的に密接である場合、労災として認定する方針を明示している。

主な3要件
  1. 対象となる精神障害か(うつ病など、医学的に認められた疾患)
  2. 発病前に業務による強い心理的負荷が確認できるか
  3. 業務以外の主要原因がないか(プライベートでの大きなストレスが主原因である場合は難しい)
「強い心理的負荷」の具体例
  • 長時間労働:発症直前1か月に100時間超の残業や、2〜6か月で月80時間超
  • ハラスメント:人格を否定する暴言・いじめ、セクハラ、パワハラなど
  • 重大な職場トラブル:大きなミスの責任を一方的に背負わされる、突発的な配置転換、過度なノルマなど

長時間労働がもたらす精神疾患

時間外労働と過労自殺
  • うつ病の発症につながる代表的な要因として、残業時間の異常な多さが挙げられる。
  • 「過労死ライン」を超える時間外労働が常態化している場合、業務起因性が強く推定され、過労自殺でも労災認定される可能性が高い。
短期間の大幅残業
  • 発症直前の1か月に急激に残業が増えた(100時間超など)場合もリスクが急増。
  • 会社が繁忙期に労働者を酷使した事例では、業務起因性が認められやすい

ハラスメント(パワハラ・セクハラ)による精神疾患

パワハラ・セクハラの強烈な心理的負荷
  • 人格を否定する罵倒や侮辱、セクハラ発言や身体的接触などは、しばしば強度のストレス源となり、うつ病や適応障害の発症原因と認定されることが多い。
  • 業務指導の範囲を逸脱し、回数・内容が執拗なものであればあるほど認定に有利。
証拠集めがカギ

ハラスメントは当事者間しかわからないことが多い。録音データメール・チャット、他の従業員の証言などを集めると監督署で認定されやすい。

会社・監督署とのやりとり

会社の非協力・自己責任論

会社が「性格的に弱いだけ」「私生活に原因がある」と否定。労災保険申請に協力しない場合もあるが、労働者本人が監督署へ直接申請でき、監督署が会社に事実確認を行う流れがある。

診断書と時期的対応
  • 精神疾患は発症時期が特定しづらく、初診日や自覚症状の出現時期が曖昧になることが多い。
  • 医師の診断書に「業務ストレス」「ハラスメント」が発症の主要因と明記してもらうなど、因果関係を示す記載が求められる。
認定の流れ
  1. 様式第8号(休業補償給付)様式第10号(障害補償給付)など、必要書類を監督署に提出。精神疾患の場合、別途精神障害に係る診断書が必須。
  2. 監督署が長時間労働状況、ハラスメントの事実などを調査し、「強い心理的負荷」があるかを判定。
  3. 業務起因性が認められれば療養補償給付休業補償給付などが支給される。

実務上の注意点

証拠の確保
  • ハラスメント録音長時間労働のタイムカードメール・チャットの記録など、後から集めにくい情報は早期に保全。
  • 精神疾患は発症時期がわかりにくいため、働き方改革前後の残業時間の変化なども含め客観的データを確保する。
セカンドオピニオン

「ストレス原因が業務にあるか微妙」という医師の見解があれば、専門の精神科医や産業医に再診してもらう。意見書が労災認定の突破口になることがある。

不服申立

監督署が「業務外」と判断しても、審査請求・再審査請求で争える。新たな証拠や詳細な診断書を提出し、認定を獲得する事例も少なくない。

弁護士に相談するメリット

  1. ハラスメント・長時間労働の事実立証
    弁護士が残業記録や証言、メール、録音などの証拠を整理し、監督署で業務起因性(強い心理的負荷)を示す効果的な立論を行う。
  2. 会社の非協力・隠蔽行為への対処
    会社が「うつ病は自己責任」と主張しても、弁護士が客観的データ法的根拠を提示し、監督署とのやりとりを円滑に進める。労災隠し行為を防ぐ。
  3. 異議申立(審査請求・再審査請求)のサポート
    不支給決定に納得できない際、弁護士が追加証拠を収集、詳細な意見書を作成し、監督署や労働保険審査会に再審理を求める。認定が覆る可能性を引き上げる。
  4. 安全配慮義務違反による損害賠償請求
    極端なハラスメントや長時間労働放置で会社の過失が大きい場合、弁護士が示談・裁判で慰謝料や逸失利益を請求し、労災給付ではカバーしきれない部分を補償させる。
  5. 復職や在職中の相談
    精神疾患で休職した労働者が職場復帰を望む際、会社が適切に配置転換や業務軽減をしないなどの問題があれば、弁護士が交渉や法的対処を支援。長期的な就労継続につなげる。

まとめ

うつ病適応障害など、精神疾患で休職・退職・自殺に追い込まれる労働者が多い現代社会において、業務起因性が認められれば労災保険の対象となる点は非常に重要です。

  • 厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」は、長時間労働(過労死ライン超)やハラスメントなど“強い心理的負荷”を中心に認定を判断。
  • 会社が「自己管理不足」や「私生活が原因」と主張しても、客観的事実(残業実態、録音データなど)を集めて監督署に申請すれば、労災認定される可能性が十分ある。
  • 認定されれば療養補償給付や休業補償給付が受給でき、症状固定後も障害が残れば障害補償給付へ進む。その間、会社の非協力や監督署の否定判断に直面しても、不服申立で争うことが可能。

精神疾患は目に見えない分、業務との因果関係を示す証拠が不十分になりがちですが、専門家のサポートを得れば、長時間労働の証拠ハラスメントの記録を整理し、労災認定される可能性が高まります。職場のストレスで心を病む人が増えるなか、労災保険を活用し、適切な治療と休業補償を受けられる道を確保することは大切です。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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