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過労死防止法の概要|国による過労死防止策と企業・社会の責任

はじめに

日本において、長時間労働が原因で脳・心臓疾患や精神疾患を発症し、死に至る過労死は、長年深刻な社会問題となってきました。近年では「働き方改革」が推進され、残業時間への罰則付き規制など法整備が進んでいるものの、依然として毎年多くの過労死・過労自殺の事例が報道され、遺族や社会に大きな衝撃を与えています。

こうした状況を受け、2014年には「過労死等防止対策推進法」(通称:過労死防止法)が成立し、国の責務として過労死防止策を強化することが明確化されました。この法律は、過労死防止に向けた基本理念や国・地方公共団体・事業主の責務を定める一方、労働者や遺族がどのようなメリットを得るのか、そして企業にどう影響するのかについては、まだ十分に周知されているとは言い難いのが現状です。

本稿では、過労死防止法の背景や目的、具体的な内容や企業の責務などを詳しく解説し、過重労働・長時間労働と闘う社会の中で、どう活かすべきなのかを考察します。過労死をなくすために、国や企業、そして個々の労働者が負う役割を再確認するための資料として、ご参考いただければ幸いです。

Q&A

はじめに、過労死防止法に関する代表的な疑問(Q)と回答(A)を整理します。詳細は「3 解説」で取り上げます。

Q1. 過労死防止法は、どのようなことが定められた法律なのですか?

過労死等防止対策推進法は、過労死等(過労死・過労自殺など)を防ぐための国の責務や、企業や社会が果たすべき役割を示し、各種防止対策を推進するための基本理念や施策を定めた法律です。

Q2. 過労死防止法で残業時間が直接規制されるのですか?

直接的に残業時間を規制する条文はありません。ただし、本法に基づく施策として、働き方改革関連法などで「時間外労働の上限規制」や「産業医機能の強化」が行われ、過重労働を抑える社会的な枠組みが整備されました。

Q3. 過労死防止法があると、遺族は何かメリットがあるのでしょうか?

法律上、遺族個人の具体的救済手段を直接規定しているわけではありません。しかし、国による相談体制や啓発活動など防止策が制度的に強化され、遺族の声を反映する機会(協議会への遺族参加)などが設けられています。

Q4. 企業には何らかの義務や罰則があるのですか?

過労死防止法では、企業に対して直接的な罰則規定はありません。ただし、安全配慮義務労働時間管理は労働基準法や働き方改革関連法で強化されており、結果として違反があれば行政指導や書類送検などを受けるリスクが高まっています。

Q5. 過労死防止法で何が変わったのか、簡単に教えてください。

国の責務として過労死等防止対策の推進が法的に位置づけられ、調査研究・啓発活動・相談体制が充実しました。さらに、過労死等防止対策推進協議会を設置し、遺族や事業主、学識経験者らの意見を取り入れ、政策に反映する枠組みが導入されました。

解説

ここからは、過労死防止法の背景や目的具体的な内容、企業や社会への影響について深掘りしていきます。過労死を防ぐために、どのような施策が推進され、どのように活かしていくべきかを整理します。

過労死防止法の背景と目的

長時間労働の深刻化
  • 日本では、高度経済成長期から長時間労働が常態化する傾向があり、1980年代以降、過労死・過労自殺が社会問題化。
  • 2000年代には「過労死ライン」が周知され、度重なる訴訟で企業の責任が追及される例が増加。
遺族の活動と社会的関心
  • 過労死遺族が「全国過労死を考える家族の会」などで団結し、国に対して過労死防止策の法制化を強く訴えた。
  • 国会での議論を経て、2014年に「過労死等防止対策推進法」が議員立法として成立。
法の目的
  • 過労死等をなくすための国の責務を明確化し、調査研究や支援策を充実させる。
  • 国・地方公共団体・事業主・国民が協力して過労死を防ぎ、遺族を支援する社会を実現。

法律の主な内容

基本理念と国の責務
  • 本法第1章で、過労死等の防止は国の責務であり、遺族や労働者の声を反映した対策を実施することが規定。
  • 国は調査研究・相談体制・啓発活動など総合的な施策を推進し、成果を公表する義務がある。
事業主・地方公共団体の役割
  • 事業主に対し、労働者の健康確保と過重労働防止に努めるよう努力義務を課している。
  • 地方公共団体は国の方針に沿った地域レベルの過労死防止施策を展開。各都道府県労働局や自治体が相談窓口を設置するケースも。
基本計画と協議会
  • 国は「過労死等防止対策大綱」基本計画を策定し、各種施策を展開する。これには遺族や労働者団体、経営者団体の意見が反映される。
  • 過労死等防止対策推進協議会で、専門家や遺族が定期的に議論し、政策へフィードバックする枠組みが整えられた。

企業への影響

直接の罰則はないが、周辺法が強化
  • 過労死防止法自体に企業への罰則規定はない。しかし、そこから働き方改革関連法へ波及し、時間外労働上限規制(罰則付き)などの法改正が行われ、企業には長時間労働を防ぐ義務が実質的に強化されている。
安全配慮義務との関連
  • 過労死防止法の理念に反し、長時間労働を是正しない企業は安全配慮義務違反が問われ、過労死や過労自殺発生時には大きな損害賠償責任を負う可能性が高まる。
  • 企業が36協定を形骸化させて時間外労働を無制限にさせていれば、監督署の是正勧告・書類送検や民事裁判で高額賠償リスクがある。
社会的責任・企業イメージ
  • 過労死事件が報道されると社会的な非難が集中し、企業イメージの大幅な損害につながる。
  • 優秀な人材の確保にも影響があり、「過労死を出した企業」で働きたくないと考える労働者が増える可能性大。

被災者・遺族のメリット

国や自治体による支援体制の充実

過労死等防止対策推進センターなど、公的機関が相談窓口遺族支援の取り組みを行っている。情報収集や法的手続きをサポートする仕組みが整備された。

調査研究の進展

国が過労死の実態調査原因分析を積極的に行い、学術研究やデータ公開が進むことで、被災者や遺族が労災認定を求める際の資料が充実する。

社会的認知向上

過労死防止法の成立を受け、過重労働の弊害や企業の責任に対する社会の意識が高まり、遺族が声を上げやすい環境が醸成されつつある。

今後の課題と展望

働き方改革の浸透
  • 過労死防止法の理念を現場に浸透させるには、企業の勤怠管理生産性向上長時間労働依存からの脱却など根本的な働き方改革が不可欠。
  • テレワークなど新しい働き方が普及するなか、長時間労働の見えにくさという別の課題が生じる。
メンタルヘルスへの対応強化
  • 過労死には精神疾患(過労自殺)も含まれ、ハラスメント問題やテレワーク時の孤立などが新たなリスク要因となっている。産業医機能や相談窓口の拡充が求められる。
過労死ラインの更なる見直し
  • 現在の過労死ライン(1か月100時間超、2〜6か月で80時間超)は、必ずしも「許容範囲」を示すものではなく、それ以下の時間外労働でも発症リスクがある。
  • 将来的にさらに厳しい規制や指針が出される可能性もあり、企業・社会全体の対応が課題となる。

弁護士に相談するメリット

  1. 過労死の認定手続きサポート
    被災者・遺族が労災保険で業務起因性を主張する際、弁護士が長時間労働記録や勤務実態を整理し、監督署への申請を支援。会社が「本人の自己管理不足」と言っても、実態が異なれば認定の可能性を高める。
  2. 会社の安全配慮義務違反による損害賠償請求
    遺族が民事裁判で逸失利益や慰謝料を求める場合、弁護士が立証戦略を設計し、証拠収集や証人尋問を行う。高額賠償が認められるケースも多い。
  3. ハラスメントや残業代未払いを含めた総合対応
    過労死の背景には、サービス残業やハラスメントが絡むことが多い。弁護士が労基法違反やパワハラ問題も含めて一括で対処し、企業の責任を追及できる。
  4. 在職中の長時間労働をやめさせる相談
    今まさに過労死ラインを超えて働いている人が、弁護士を通じて会社に是正を求めることで、トラブルが深刻化する前に長時間労働を改善する道が開ける。
  5. 企業側のリスクヘッジ
    企業が弁護士に相談し、勤怠管理や健康診断の活用、面接指導などを徹底すれば、将来的な過労死発生リスクとその訴訟リスクを下げられる。

まとめ

過労死ライン」は、日本における長時間労働の深刻性を象徴する基準であり、1か月100時間超または2〜6か月で80時間超の残業が続くと過労死リスクが大幅に高まるとされています。

  • 過労死等防止対策推進法(過労死防止法)は、国の責務として過労死対策を推進し、調査研究や相談支援を強化するために成立。
  • 法律自体に企業への罰則規定はないが、周辺法(労働基準法、働き方改革関連法)で時間外労働の上限規制が強化され、安全配慮義務も含めて企業の責任が非常に重くなっている。
  • 被災者や遺族は、労災保険で遺族補償を受けるだけでなく、会社の安全配慮義務違反として損害賠償を求める道がある。

長時間労働を「仕方ない」「本人の自己管理不足」と放置するのではなく、企業と労働者が協力し、国の制度を活用して過労死をなくすことが社会の共通課題です。もし過労死ラインを超える働き方を強いられたり、過労死・過労自殺の被害に遭った場合は、専門家に早めに相談し、法的救済と再発防止を目指していただきたいと思います。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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