労災の後遺症とは?|適切な補償を受けるために知っておくべきこと
目次
はじめに
労災によって後遺症が残ってしまった場合、適切な補償を受けるためにはどのような手続きが必要でしょうか?また、会社に対してどのような請求が可能なのでしょうか?労災の後遺症は被災者やその家族にとって大きな負担となります。本ガイドでは、労災の後遺症に関する基本的な情報や、適切な補償を受けるための手続きについて解説します。ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
労災の後遺症とは?
Q: 労災の後遺症とは何ですか?
労災の後遺症とは、労働災害(労災)によって発生したケガや病気が、治療を続けたにもかかわらず、完治せずに症状が残ってしまう状態を指します。例えば、工事現場での事故により手足の一部を失った場合や、化学物質に曝露されて呼吸器系に障害が残った場合などが典型的です。これらの後遺症は、被災者の日常生活や職業生活に多大な影響を及ぼし、労働能力を低下させることがあります。
Q: 後遺症と後遺障害の違いは何ですか?
「後遺症」と「後遺障害」という言葉は似ていますが、法律上では異なる意味を持ちます。
- 後遺症:治療を続けた結果、症状が固定化し、これ以上改善しない状態を指します。
- 後遺障害:後遺症のうち、労働能力の喪失を伴い、労災の障害等級表に該当するものです。
後遺症は幅広い概念で、すべての後遺症が後遺障害として認定されるわけではありません。後遺障害として認定されるためには、特定の基準を満たす必要があります。
例えば、手の指を失った場合、それが労災の障害等級表に該当する「後遺障害」として認定されれば、追加の補償を受けることができます。一方で、軽度な神経痛が残った場合、それが後遺症であっても、後遺障害として認定されない可能性があります。
労災の後遺症に対する補償内容
Q: 労災の後遺症が残った場合、どのような補償が受けられますか?
労災の後遺症に対する補償は、大きく分けて2種類あります。労災保険からの補償と、会社からの補償です。それぞれの補償内容について、以下で詳しく説明します。
1. 労災保険からの補償
- 治療費:労災保険から療養補償給付として支払われます。労災指定病院に通院している場合には、治療費は労働局から直接病院に支払われるため、被災者が治療費を支払う必要はありません。一方、労災指定外の病院で治療を受ける場合は、いったん自分で治療費を支払い、その後に労働基準監督署へ請求することで返金を受けられます。
- 休業損害:労災事故によって仕事を休まざるを得なくなった場合、労災保険から休業補償給付が支給されます。給付基礎日額の60%が支給され、特別支給金としてさらに20%が支給されます。これにより、実質的に元の賃金の80%が保障されます。
- 通院交通費:通院が必要な場合、通院距離や通院先の医療機関によって、労災保険から交通費が支給されることがあります。例えば、片道2km以上の通院であれば交通費が支給される可能性がありますが、条件によってはそれ未満でも支給されることがあります。
- 後遺障害年金・一時金:労災保険からは、後遺障害の等級に応じて年金や一時金が支給されます。1級から7級までの重度の後遺障害の場合は年金が、8級から14級の場合は一時金が支給されます。後遺障害の程度に応じて支給額が異なります。
2. 会社からの補償
会社からの補償を受けるためには、安全配慮義務違反が認められる必要があります。これは、会社が従業員の安全を確保するために必要な措置を怠った場合に適用されるものです。以下のような場合に、会社に対して追加の補償を請求することが可能です。
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が認定された場合、その等級に応じて会社に慰謝料を請求することができます。慰謝料の金額は等級によって異なり、例えば14級であれば110万円程度、1級であれば2800万円程度が相場とされています。
- 逸失利益:後遺障害によって将来得られるはずだった収入が減少する場合、その損失分を補償するものです。労災保険からの支給だけでは不足する場合、会社に対して追加で請求することができます。逸失利益の算出は複雑で、基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間に応じて計算されます。
- 入通院慰謝料:会社に安全配慮義務違反が認められた場合、入通院に伴う精神的な苦痛に対して慰謝料を請求することができます。交通事故の場合の相場を基準にして算定されることが多いです。
Q: 補償の申請手続きはどのように進めるべきですか?
後遺症が残った場合、まずは後遺障害の認定を受けるための手続きを進めることが重要です。この手続きが適切に行われないと、十分な補償を受けられない可能性があります。
労災の後遺症に対する手続き
Q: 労災の後遺症が残った場合、どのような手続きが必要ですか?
労災の後遺症が残った場合、まずは後遺障害の申請を労働基準監督署に行う必要があります。この申請の際に重要なのが、「後遺障害診断書」です。この診断書には、残存している症状やその程度、労働能力に与える影響などを詳細に記載する必要があります。
1. 後遺障害診断書の作成
主治医に依頼して、労災指定の様式で後遺障害診断書を作成してもらいます。診断書は後遺障害の認定において最も重要な書類であり、内容に不備があると審査が進まないことがあります。診断書の作成費用は労災保険から4000円が支給されますが、実際の作成費用がそれを超える場合、超過分は自己負担となることがあるので注意が必要です。
2. 労働基準監督署への申請
後遺障害診断書が完成したら、その他の必要書類とともに、所轄の労働基準監督署に提出します。申請書類には、労災保険の様式10号(通勤災害の場合は様式16号の7)、レントゲンやCT、MRIなどの画像資料、その他認定に必要な資料が含まれます。
3. 労働基準監督署での面談
後遺障害の申請を行った後、労働基準監督署で担当者との面談が行われます。面談では、事故の状況や後遺症の状態などを確認されます。面談は、特殊な事情がない限りすべての案件で実施されるため、準備が必要です。
Q: 弁護士に相談するメリットは何ですか?
後遺障害の申請を行う際、弁護士に相談することを強くお勧めします。特に、会社が後遺障害の申請に協力しない場合や、診断書の内容に不安がある場合は、弁護士のサポートが有益です。弁護士は、診断書のチェック、必要な証拠の収集、労働基準監督署とのやり取りなど、申請手続き全般をサポートします。
弁護士に相談するメリット
Q: 労災で後遺症が残った場合、なぜ弁護士に相談するべきですか?
労災で後遺症が残った場合、適切な補償を受けるための手続きは非常に複雑で、法的知識が求められる場面も多々あります。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 専門的なアドバイス:労災や後遺障害に関する法律に精通した弁護士から、具体的なケースに応じたアドバイスを受けることができます。
- 手続きの代行:証拠の収集や書類の作成など、手間のかかる手続きを弁護士が代行するため、被災者は治療やリハビリに専念できます。
- 交渉力:会社との示談交渉や裁判において、法的な知識と経験を持つ弁護士がサポートすることで、有利な条件を引き出すことが可能です。
まとめ
労災で後遺症が残った場合、後遺障害の申請を行い、適切な補償を受けることが極めて重要です。労災保険からの補償だけでなく、会社に対しても安全配慮義務違反が認められれば、さらなる補償を請求することが可能です。しかし、そのためには適切な手続きを経る必要があり、専門的な知識が要求される場面も多くあります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労災案件に精通した弁護士が、後遺障害の申請から会社との交渉まで、各プロセスをサポートします。全国対応での相談が可能ですので、労災に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。