会社に対して損害賠償請求をするためのポイント
はじめに
労働災害は、働く現場で突然起きる予期せぬ事故です。被災した従業員にとって、治療費や休業期間中の収入減少は深刻な問題となります。その際、労災保険だけでなく、会社に対して損害賠償請求を行うことができるケースもあります。本記事では、労働災害における会社の損害賠償責任や請求の流れを分かりやすく解説します。
Q&A
Q: 労働災害が起きたら、まず何をすればよいですか?
A: 怪我や体調不良がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。また、労災保険の適用手続きのため、事故の状況を詳しく記録しておきましょう。
Q: 労災保険と損害賠償請求はどう違いますか?
A: 労災保険は労働基準監督署を通じて給付を受ける制度で、過失の有無を問わず補償を受けられます。一方で、損害賠償請求は、会社の責任が問える場合に追加的に行うものです。
Q: 会社に損害賠償を請求する場合、どんな準備が必要ですか?
A: 事故の状況を示す資料や、労災保険に関する書類を揃えることが重要です。具体的な内容については後述します。
労働災害に対して会社が損害賠償責任を負う場面
会社が損害賠償責任を負う典型的な場面は以下のとおりです。
1. 他の従業員の不注意による事故
従業員同士の不注意が原因で事故が起きた場合、会社は「使用者責任」(民法第715条)に基づき損害賠償責任を負います。
例
- フォークリフト作業中に、他の従業員が被害者に気づかず衝突した。
- 上から物を落とし、下にいた従業員に当たった。
2. 安全配慮義務違反による事故
会社には、従業員が安全に働ける環境を整える「安全配慮義務」があります。この義務を怠った場合、会社は損害賠償責任を負う可能性があります。
例
- 機械に安全装置がなく、作業中に手を挟んだ。
- 高所作業で適切な保護具が支給されず、落下事故が発生した。
3. 特殊な工作物責任
作業場の設備や道具が不備で、通常求められる安全性を欠いていた場合は「工作物責任」(民法第717条)が問われることがあります。
例
- 倉庫の天井から設備が落下し、負傷した。
被災者が会社に対して損害賠償請求を行うためのポイント
1. 資料の収集
労災事故の状況や被害の程度を証明する資料を揃えることが重要です。
- 事故の状況を記録:写真や事故報告書。
- 労災保険関連書類:労働者死傷病報告書、休業補償給付支給請求書など。
- 医療記録:診断書や診療報酬明細書。
2. 会社への内容証明郵便
会社に損害賠償を請求する際は、まず内容証明郵便で通知を行います。この段階で弁護士に相談することで、適切な内容の文書作成が可能となります。
3. 話し合いと交渉
資料を基に、会社と損害賠償について話し合います。話し合いで解決しない場合は、訴訟を視野に入れることになります。
4. 時効に注意
損害賠償請求には時効がありますので、消滅時効の管理にはご留意ください。
弁護士に相談するメリット
専門家に相談することで以下のようなメリットがあります。
1. 法的な見解をもとにしたアドバイス
弁護士は、事故の状況や資料を基に、損害賠償請求の可否や請求額について適切なアドバイスを提供します。
2. 手続きの代行
被災者自身では難しい資料収集や会社との交渉を弁護士が代行します。これにより、被災者の精神的・時間的負担を軽減できます。
3. 適切な損害賠償額の算定
弁護士が関与することで、見逃しがちな損害項目(逸失利益、慰謝料など)も含めた請求が可能です。
まとめ
労働災害による損害賠償請求は、法律や専門知識を要する複雑な手続きです。会社に損害賠償を求めるには、事故の状況や責任を明確にし、法的根拠を示す必要があります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労働災害に関するご相談を受け付けておりますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
動画のご紹介
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