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【長時間労働・過重労働による過労死】法的責任と労災認定、会社の防止策を徹底解説

はじめに

「連日深夜まで残業し続け、体調を崩して倒れてしまった」
「休日出勤が半年以上続き、ついに心臓疾患で命を落としてしまった」

長時間労働・過重労働がもたらす健康障害は、労働者にとって最も深刻なリスクの一つです。中でも、過労死(脳・心臓疾患)や過労自殺(精神疾患)は家族や周囲に大きなショックを与え、企業側の責任追及が厳しく問われることが少なくありません。

日本では「過労死」という言葉が世界的にも知られるほど、長時間労働の文化が根深い一方で、法改正により時間外労働の上限規制が整備されるなど、少しずつ環境は変わりつつあります。にもかかわらず、依然として「忙しいのは仕方ない」「自己管理不足」として放置されるケースが後を絶ちません。

本稿では、長時間労働・過重労働による過労死(脳・心疾患)や精神疾患(過労自殺)について、労災認定の基準や会社の安全配慮義務、実際に遺族が取れる法的手段や損害賠償請求などを中心に解説します。過労死は突然の悲劇であり、決して「本人の責任」だけで終わらせてはならない問題です。企業側が十分な労務管理や健康管理を行わずに従業員を酷使していたと判明すれば、重大な法的責任を負う可能性があります。

Q&A

はじめに、長時間労働・過重労働による過労死に関連して、よくある質問(Q)と回答(A)を簡潔に整理します。詳細は後述の「3 解説」で深掘りします。

Q1. 「過労死ライン」とは何ですか?

一般的に、「過労死ライン」とは「発症前1か月に100時間超の時間外労働」または「発症前2〜6か月間に月80時間超の時間外労働」が認められる場合を指します。これを超える残業が恒常化していると、脳・心臓疾患や精神疾患のリスクが非常に高いとされ、労災認定の目安ともされています。

Q2. 長時間労働が原因でうつ病になり、自殺してしまった場合も労災になりますか?

はい。過重労働が原因の過労自殺は、厚生労働省の精神障害認定基準で「強い心理的負荷」として扱われ、労災認定される可能性があります。実際に長時間労働や休日出勤が続いた結果、うつ病を発症し自殺したケースで労災が認められた例が多数あります。

Q3. 会社が「本人が自主的に残業していただけ」と主張してくる場合はどうなりますか?

自主的な残業かどうかは労働実態が重要です。タイムカードやPCログなどで長時間労働が会社の黙認の下で行われていたことが判明すれば、会社の安全配慮義務違反は免れません。労基署や裁判でも「実質的に会社が強要していた」と判断されるケースがあります。

Q4. 家族が過労死で亡くなった場合、遺族はどのような補償を受けられますか?

遺族は労災保険の遺族補償給付(遺族補償年金または一時金、葬祭料)を受け取るほか、会社に対して安全配慮義務違反による損害賠償(逸失利益、慰謝料など)を求めることができます。

Q5. 会社が「労災は認められない」と言って手続きをしてくれない場合は?

労災保険は本人または遺族が直接、労働基準監督署に申請できる仕組みです。会社が拒否しても監督署に相談し、必要書類をそろえて申請すれば労災認定を受けられる可能性があります。

 

解説

ここでは、長時間労働・過重労働によって引き起こされる過労死の仕組みや、労災認定の要件、会社の責任、安全配慮義務違反の具体例などを詳しく見ていきます。

過労死・過労自殺のメカニズムと類型

過労死(脳・心臓疾患)
  • 長時間労働や休日出勤、夜勤・交代制勤務などが続くと、過度の疲労やストレスが身体機能に深刻な負担を与え、高血圧、動脈硬化、心臓発作、脳卒中などのリスクが高まる。
  • 発症前1か月に100時間超の残業または2〜6か月に80時間超の残業が継続しているケースでは、労災保険で「過労死ライン」を超えていると判断されやすい。
過労自殺(精神疾患)
  • 過重労働の結果、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症し、自殺に至るケース。
  • パワハラやセクハラなどのハラスメントが併存する場合も多く、精神的負荷がさらに高まる。
  • 厚労省の認定基準では、発症前の「強い心理的負荷」があったか(長時間労働や厳しいノルマなど)を精査し、因果関係を判断。

労災認定の基準と手続き

脳・心臓疾患
  • 過去の裁判例や行政通達により、過労死ラインを指標に業務起因性を判断する。
  • 発症前に急激な業務量の増加連日の深夜残業、休日の連続出勤などがあれば、強い負荷として認定されやすい。
精神障害(過労自殺)
  • 「業務による強い心理的負荷」がうつ病などを引き起こし、自殺や自殺未遂に至ったと認められれば労災保険の適用対象となる。
  • 具体的には1か月100時間超、2〜6か月で月80時間超の残業や休日労働、休日なしなどが典型例として扱われる。
会社の非協力や証拠の不在
  • 会社が労働時間を適切に記録していない場合、タイムカードやPCログ、メール送信時間などで実際の労働時間を立証する。
  • 被害者や遺族が証拠を集めきれない場合、監督署で事情を説明し、会社への調査を求めることも可能。

会社が負う安全配慮義務と違反

労働時間管理の義務
  • 会社は労基法や労働時間適正把握ガイドラインなどに従い、従業員の労働時間を正確に把握・管理する責任がある。
  • 過度の残業が発生しないよう36協定で定める時間外上限や、健康診断結果を踏まえた措置を講じる。
休日・休暇の確保

労働者には週1回以上の休日や年次有給休暇の取得が法律で保障されているが、会社が運用上これを形骸化し、実質的に「休めない環境」を作っている場合、安全配慮義務違反に問われる可能性が高い。

健康診断とフォロー
  • 会社は1年に1回の定期健康診断を実施し、高ストレスの労働者には産業医面談など健康管理措置をとらなければならない。
  • 長時間労働者(過労死ラインを超える時間外労働)には特別な健康診断や面談指導を義務づけることも必要。

過労死・過労自殺が起きた場合の対応

医療機関の診断・救急対応
  • 被害者が倒れたり自殺未遂をした場合、緊急搬送して医師の診断・治療を最優先する。
  • 死亡事故となった場合、会社と遺族が動揺しがちだが、速やかに労災手続きを進める必要がある。
労災保険申請(遺族補償給付)
  • 遺族は労災保険の遺族補償給付や葬祭料を請求できる。会社が拒否しても、遺族が直接、労働基準監督署に申請可能。
  • 過労自殺の場合は精神障害の認定基準に沿って業務起因性を証明する必要がある。
損害賠償請求
  • 会社が長時間労働を放置していた、健康診断結果を無視していたなどの過失が認められれば、安全配慮義務違反として遺族は会社を相手取り、慰謝料や逸失利益などを請求可能。
  • 裁判において数千万円〜数億円規模の賠償金が命じられた事例も存在する。

弁護士に相談するメリット

  1. 労働時間や業務負荷の立証サポート
    過労死や過労自殺の労災認定には、具体的な残業時間や作業量の証拠が必要。弁護士がタイムカードやPCログ、メール記録などを整理し、監督署や裁判所で通用する証拠を構築してくれる。
  2. 会社との示談・裁判交渉
    会社が責任を認めず、過失を否定する場合、弁護士が代理人として示談交渉や訴訟を進めることで、遺族の精神的負担を大幅に軽減できる。
  3. 不服申立手続きの対応
    労災保険が不支給と判断した場合でも、審査請求や再審査請求で争う道がある。弁護士は追加証拠の収集や意見書の作成を行い、認定が覆る可能性を引き上げる。
  4. 企業側の予防法務
    企業が弁護士に相談し、過重労働を防ぐ就業規則の改定や勤怠管理システムの整備、産業医活用などを進めれば、将来的な過労死リスクを下げられる。
  5. 心理的ケアや他制度との併用
    遺族側や被災者本人が精神的ショックを負っている場合、弁護士がメンタルヘルスの専門家と連携し、労災保険以外の社会保障制度(障害年金など)との併用も案内してくれる。

まとめ

長時間労働・過重労働による過労死や過労自殺は、企業が従業員を酷使し、十分な健康管理を怠った結果発生する深刻な労働災害です。

  • 過労死ラインを超える残業や休日出勤が続いていないか
  • 休日や有給休暇を取得できる制度が形骸化していないか
  • 健康診断や産業医の意見を無視していないか

これらに該当し、労働者が脳・心臓疾患で亡くなる、あるいは精神疾患を発症して自殺した場合、労災保険の遺族補償給付が適用されるだけでなく、会社の安全配慮義務違反として多額の損害賠償が命じられる可能性も高いです。

会社が「本人が勝手に残業した」と主張しても、実際の労働実態(強制・黙示の強要)が認められれば言い逃れは許されません。遺族や被災者自身は弁護士法人長瀬総合法律事務所などに相談し、労災申請と並行して民事賠償を求めることを検討できます。

過労死は突発的な悲劇でありながら、実は長年にわたる過重労働と企業の管理不備が原因であることがほとんどです。こうした悲劇を繰り返さないためにも、各企業が法律を守り、働き方改革を徹底するとともに、万が一発生した場合は法的に適切な対応をとることが重要です。

動画のご紹介

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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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