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労災不支給決定の主な理由

はじめに

労災保険(労災)を申請しても、必ずしも“業務上のケガ・病気”として認められるわけではありません。特に、長時間労働ハラスメントが原因と考えられる精神疾患や過労死・過労自殺の場合、会社が「業務と無関係」と主張したり、発症時期や私生活の要因などが絡んで、監督署が「業務外」と判断するケースが珍しくありません。

こうした労災不支給決定に直面した場合にも対応方法はあります。審査請求・再審査請求という不服申立の手続きで、新たな証拠や医師の意見書を提出し、決定を覆した事例も存在します。一方で、遺族や被災者が手続きを進めるには複雑な法的知識が必要であり、会社が非協力的な場合は証拠集めも困難になりがちです。

本稿では、労災不支給決定が下される主な理由と、その背景となる監督署の判断基準、そして不服申立を行う際のポイントを解説します。思わぬ不支給に直面しても、追加の証拠等を得れば状況を変えられる可能性がありますので、ぜひご参照ください。

Q&A

はじめに、労災保険の不支給決定をめぐる代表的な疑問(Q)と回答(A)を簡潔に示します。詳細は「3 解説」で掘り下げます。

Q1. 労災申請が不支給になる主な理由は何ですか?

「業務外の要因が大きい」「労働時間の客観的証拠が不十分」「ハラスメント事実が立証できない」「医師の診断書や発症時期が曖昧」などで、業務起因性を認められないと判断される場合があります。

Q2. 不支給でも、あきらめるしかない?

いいえ。審査請求・再審査請求の手続きを行い、追加証拠を提出すれば認定が覆る事例は少なくありません。弁護士や社労士に相談して不服申立をすることもご検討ください。

Q3. 会社が「健康診断でも問題なかったし、私生活のストレスでは?」と言ってきますが?

監督署は客観的な残業時間や業務内容を重視します。会社の主張が実態と異なれば、タイムカードやPCログなどで長時間労働の実態を示すことが不支給決定の覆しに有用です。

Q4. 精神疾患の発症時期があいまいで、業務起因性が認められませんでした。どうすれば?

専門医の見解や職場の変化時期など、具体的な時系列を再度整理し、追加証拠(メール、勤務内容の変化)を用意して審査請求すると、有利になる可能性があります。

Q5. 不支給決定後、どれくらいで異議申立てをしないと時効になる?

不服申立には30日以内など期限があり、経過すると手続きが認められなくなります。余裕をもって弁護士や社労士に相談し、スケジュール管理をすることが重要です。

解説

ここでは、労災不支給となる主要な理由や監督署の判断プロセス、さらに不支給を覆すための対策や不服申立手順を詳しく見ていきます。

不支給決定が下される主な理由

業務起因性が否定されるケース
  • 監督署が「長時間労働の証拠が足りない」「発症時期や死亡時期と業務負荷の因果関係が薄い」などを理由に業務外と判断。
  • プライベートのストレス(家庭問題など)が主原因とみなされる場合も。
ハラスメント事実の立証不足
  • 上司から暴言を受けた」と被災者が主張しても、録音やメールなど具体的証拠がなければ強い心理的負荷と認定されないことがある。
  • 第三者(同僚など)からの証言が得られず、会社が否定すると、監督署が事実確認できず不支給となる。
発症時期と業務負荷の不一致
  • 精神疾患などは発症時期が曖昧になりがち。監督署が「病気の兆候が既にプライベートで出ていたのでは?」と推定し、業務との近接性を認めない例。
  • 脳・心臓疾患の場合も、過労死ライン超えが直前1か月や2〜6か月にないと不支給となることがある。

不支給決定までの監督署の判断プロセス

書類審査と会社への照会
  • 被災者・遺族が様式(休業補償・遺族補償など)を提出 → 監督署が会社に対し勤怠記録や労働内容を確認。
  • 十分なデータが揃わないと追加照会が行われ、不備の補正を求められる。
医師の意見・専門調査
  • 精神疾患の場合、産業医や主治医の診断書で発症原因を評価。
  • 医師の見解が「業務と無関係」「私生活が原因」などと書かれていると不利になりがち。
不支給決定
  • 監督署が「業務起因性が薄い」と判断→不支給通知が遺族・被災者へ送付。
  • ここから審査請求→棄却されれば再審査請求で次の段階に移る。

不支給を覆すための対策

追加証拠や医師の再意見
  • 残業時間の実態(PCログ、入退室記録、残業指示メール、同僚証言)
  • ハラスメント録音・メール
  • 専門医の意見書:「業務による強いストレスが主因」と明確に示す
  • 発症時期や私生活原因を否定する客観的資料(家庭の状況、以前は健康だった証拠など)
審査請求・再審査請求
  • 労働者災害補償保険審査官に審査請求し、棄却なら労働保険審査会に再審査請求できる。
  • それでも不服なら行政訴訟へ進む方法がある。
弁護士の活用
  • 会社が「サービス残業はない」などと説明をしていても、弁護士が法的手段で資料開示を求める可能性がある。
  • 書類作成や審査請求の論点整理で力を発揮する。

主な想定事例

ハラスメント立証不足で不支給 → 追加証拠の提出で覆る
  • 会社が「パワハラはなかった」と主張し監督署が不支給
  • 遺族が後から見つけたファイルを再審査請求で提出→「強い心理的負荷」として業務起因性を主張立証する
残業時間記録の乖離
  • 会社提出の勤怠システムは「月20時間」だが、PCログを精査すると実際は月100時間超の残業
  • 遺族が弁護士とともにPCログ解析→不服申立で業務起因性を主張立証する
医師の診断書を追加
  • 「発症時期が不明確」「私生活原因」とされたが、別の専門医に過去の勤務表や発症状況を詳細に伝え「業務由来のストレスで発症した疑いが強い」という意見書を取得する
  • 監督署に再提出で不支給取り消しを求める

不支給決定後の行動計画

  1. 理由書の精査
    不支給決定通知に記載される理由を確認。どの点が認められなかったかを把握し、追加資料を検討。
  2. 専門家への相談
    弁護士等に書類を見せ、逆転の可能性を判断してもらう。
  3. 証拠追補
    ハラスメントに関するメール、残業ログ、医師の再度意見書などを揃える。
  4. 審査請求・再審査請求
    期限内に必要書類をまとめて提出。
  5. 行政訴訟
    再審査請求が棄却されても諦めず、裁判所で争う道あり。

弁護士に相談するメリット

  1. 不支給理由を分析し、追加証拠を効果的に提出
    弁護士が監督署の認定基準・過去の事例を踏まえ、不支給理由を潰すために必要な証拠(勤怠データ、医師意見書など)を的確に補強できる。
  2. 会社への情報開示請求
    会社が非協力的な場合も、弁護士が裁判手続きなどを利用して資料を開示させる戦略を立てられる。
    サービス残業を主張立証する方法論を把握している。
  3. ハラスメントや残業代不払の並行交渉
    不支給決定を覆す一方で、会社との損害賠償交渉残業代請求も同時に進める戦略が可能。
  4. 時効管理と手続き代行
    不服申立の期限を守り、書類を整える作業を代行できるため、被災者や遺族の負担を軽減。
  5. 最終的に裁判所で争う場合のサポート
    再審査請求で棄却されても、弁護士が行政訴訟で業務外認定を覆す方法を検討する。

まとめ

労災保険(労災)での不支給決定は、業務上のケガや病気で苦しむ被災者や遺族にとって大きな打撃ですが、決定が出た段階で必ず諦める必要はありません。

  • 不支給の理由は「業務と無関係」「プライベートが原因」「証拠不足」などが多いが、追加の証拠(残業ログ、ハラスメント録音、医師の再意見書)をそろえれば、審査請求・再審査請求で認定が覆ることもあり得る。
  • 会社の非協力があっても、弁護士等のサポートで事実を立証する。特に弁護士は証拠開示請求裁判手続きで会社を追及する方法を検討できる。
  • 不支給が取り消されて業務上と認定されれば、療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付など、労災保険の給付を受ける道が開ける。

もし不支給通知が届いてショックを受けても、異議申立期限を逃さず、弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家に相談すれば、認定を変更できる可能性が高まります。専門家のアドバイスで必要な追加資料を明確にし、労災認定をご検討ください。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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