労災で受けられる補償はこんなにある!労災保険給付の種類を一覧で解説
はじめに
もしあなたが、仕事中や通勤途中の事故で怪我を負ってしまったら、頭の中には様々な不安が渦巻くことでしょう。
「治療費は一体いくらかかるのだろうか…」
「働けない間の生活費はどうしよう…」
「もし体に障害が残ってしまったら、この先の人生はどうなるのか…」
「万が一、自分に何かあったら、家族はどうなってしまうのか…」
このような、被災された労働者やそのご家族が抱える切実な不安に応えるため、労災保険制度は、非常に多岐にわたる手厚い給付メニューを用意しています。それは単に治療費を補うだけでなく、休業中の生活を支え、後遺障害と向き合う人生を助け、そしてご遺族の未来を守るための、総合的なセーフティーネットなのです。
この記事では、労災保険から受けられる補償(保険給付)にはどのような種類があるのか、その全体像を分かりやすく一覧で解説します。ご自身の状況で、どのようなサポートを受けられる可能性があるのかを把握し、正当な権利を漏れなく受け取るための一助としてください。
労災保険給付の2階建て構造:「保険給付」と「特別支給金」
労災保険の給付は、2階建ての構造になっています。
- 1階部分:保険給付
労働者災害補償保険法という法律に基づいて支給される、中心的な給付です。この記事で詳しく解説する8種類の給付がこれにあたります。 - 2階部分:特別支給金
被災された労働者の社会復帰を支援することなどを目的として、1階部分の保険給付に上乗せして支給される給付金です。保険給付とは別の財源(社会復帰促進等事業)から支払われます。
これからご紹介する保険給付の多くには、この「特別支給金」が付随しており、実際の受取額は「保険給付+特別支給金」の合計額となります。この手厚い構造が、労災保険の大きな特徴です。
【労災保険給付 全9種類】あなたの状況に合った給付は?
それでは、労災保険の根幹をなす9つの「保険給付」を一つずつ見ていきましょう。なお、給付の名称は、業務災害の場合は「〇〇補償給付」、通勤災害の場合は「〇〇給付」となりますが、受け取れる内容は同じです。
療養(補償)給付:治療費の心配をなくすための給付
どんなときに?
業務または通勤が原因の傷病により、治療が必要になったとき。
どんな内容?
治療費、入院費、手術費用、薬代、移送費など、治療に必要な費用が支給されます。原則として、自己負担は一切ありません。
- 療養の給付
労災保険指定医療機関にかかれば、窓口での支払いは不要で、治療そのものが現物で給付されます。 - 療養の費用の支給
近くに指定病院がないなどの理由で、それ以外の医療機関で治療を受け、費用を立て替えた場合に、その全額が現金で支給されます。
休業(補償)給付:休んでいる間の生活を支える給付
どんなときに?
療養のために働くことができず、会社から賃金を受けられないとき。
どんな内容?
休業した日が3日間続いた後(待機期間)、休業4日目から支給されます。1日あたりの支給額の目安は、給料(給付基礎日額)のおよそ8割です。
内訳:保険給付として60% + 特別支給金として20% = 合計80%
障害(補償)給付:後遺障害が残ったときの給付
どんなときに?
治療を継続してもこれ以上の改善が見込めない状態(症状固定)となり、身体に一定の後遺障害が残ったとき。
どんな内容?
後遺障害の程度に応じて定められた障害等級(最も重い第1級~最も軽い第14級)に基づいて、「年金」または「一時金」が支給されます。これは、被災後の人生を支える上で、非常に重要な給付です。
- 障害(補償)年金
第1級~第7級に該当する場合。給付基礎日額の313日分~131日分が年金として毎年支給されます。 - 障害(補償)一時金
第8級~第14級に該当する場合。給付基礎日額の503日分~56日分が一時金として一度に支給されます。
遺族(補償)給付:万が一、亡くなったときの給付
どんなときに?
労働者が業務または通勤が原因で亡くなったとき。
どんな内容?
亡くなった労働者によって生計を維持されていた遺族の生活を支えるため、「年金」または「一時金」が支給されます。
- 遺族(補償)年金
受給資格のある遺族(配偶者、子、父母など)がいる場合に、遺族の数に応じて給付基礎日額の245日分~153日分が支給されます。 - 遺族(補償)一時金
年金の受給資格者がいない場合などに、一定の遺族に給付基礎日額の1,000日分が支給されます。
傷病(補償)年金:療養が1年6ヶ月以上に及んだときの給付
どんなときに?
療養を開始してから1年6ヶ月が経過しても傷病が治癒(症状固定)せず、その障害の程度が法律で定められた傷病等級(第1級~第3級)に該当するとき。
どんな内容?
それまで受け取っていた休業(補償)給付に代わって、より安定的な生活保障である年金として支給されます。等級に応じて、給付基礎日額の313日分~245日分が支給されます。
介護(補償)給付:介護が必要になったときの給付
どんなときに?
障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受け取っている方のうち、障害の程度が非常に重く(精神神経・胸腹部臓器の障害で第1級、または第2級)、現に介護を受けているとき。
どんな内容?
介護にかかる費用を補填するための給付です。常に介護が必要な「常時介護」か、随時介護が必要な「随時介護」か、親族による介護か、実際に支出した費用の額などに応じて、月単位で一定額が支給されます。
葬祭料(葬祭給付):葬儀の費用を補う給付
どんなときに?
労働者が業務または通勤が原因で亡くなり、葬儀が行われたとき。
どんな内容?
葬儀を行った者(遺族など)に対して、葬儀費用として支給されます。金額は「315,000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」の、いずれか高い方の額となります。
二次健康診断等給付:脳・心臓疾患を予防するための給付
どんなときに?
他の給付とは異なり、災害の「予防」を目的とした給付です。会社の定期健康診断(一次健康診断)で、血圧、血中脂質、血糖、肥満度のすべての項目で「異常の所見」があると診断されたとき。
どんな内容?
過労死などの原因となる脳・心臓疾患を発症するリスクを早期に発見・予防するため、専門医療機関での二次健康診断と、医師や保健師による特定保健指導を、1年度に1回、無料で受けることができます。
社会復帰促進等事業:社会復帰促進等事業として特別支給金の給付
どんなときに?
労働者が怪我や病気などの労働災害に遭った際に、その労働者が再び社会生活に戻ることを支援するための事業
どんな内容?
リハビリテーションや職業訓練、福祉機器の提供などを受けることができます。
まとめ
労災保険は人生の様々な局面を支える制度です
このように、労災保険制度は、被災直後の治療から、休業中の生活、後遺障害が残った場合の将来、そして万が一の事態に至るまで、労働者の人生のあらゆる局面を支えるための、非常に手厚く、多岐にわたる補償を用意しています。
しかし、これらの給付は、待っているだけでは受け取れません。ご自身の状況に応じて、ご自身で(またはご家族が)請求手続きを行う必要があります。
「自分の場合は、どの給付が対象になるのだろう?」
「手続きの仕方がよくわからない」
もし、あなたがそのような疑問や不安をお持ちでしたら、どうか一人で悩まないでください。私たち弁護士法人長瀬総合法律事務所は、労働災害に遭われた方々が、受けられるべき正当な補償を一つも漏らすことなく受け取れるよう、専門的な知識でサポートいたします。どの給付を申請できるかのアドバイスから、複雑な申請手続きの代行まで、安心してお任せください。
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