【給付の種類別】あなたかがもらえる労災保険給付金の詳細解説 重い後遺障害が残った方のための介護(補償)給付とは
はじめに
労働災害によって重篤な後遺障害が残った場合、被害者ご本人だけでなく、ご家族の生活も一変します。特に、日常生活において「介護」が必要となった場合、ご家族の身体的・精神的な負担に加え、ヘルパーの利用料や介護用品の購入といった経済的な負担も重くのしかかります。
今回は、そのような重い障害を負われた方と、その生活を支えるご家族のために用意された「介護(補償)給付」について詳しく解説します。
障害(補償)年金とは別に、月々の介護費用を補助してくれる非常に重要な制度ですが、意外と知られていなかったり、申請漏れがあったりするケースも見受けられます。
受給の条件や注意点を正しく理解し、利用できる権利を確実に活用しましょう。
介護(補償)給付とは?
まず、この制度の基本的な仕組みを解説します。
制度の目的
介護(補償)給付は、労働災害により重度の障害が残り、現に介護を受けている状態にある労働者に対して、その介護にかかる費用を補填するために支給されるものです。
これは、生活費の補償である「障害(補償)年金」や「傷病(補償)年金」とは別に、上乗せして支払われます。
業務災害と通勤災害の違い
他の給付と同様、事故の原因によって名称が異なりますが、給付の内容は同じです。
- 業務災害の場合: 介護補償給付
- 通勤災害の場合: 介護給付
受給できる3つの条件
介護(補償)給付を受け取るためには、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。
条件①:特定の重い障害等級に該当していること
すべての後遺障害が対象ではありません。対象となるのは、「障害(補償)年金」または「傷病(補償)年金」の受給者のうち、以下の等級に該当する方です。
- 第1級の方: 全員が対象
- 第2級の方: 「精神・神経の障害」または「胸腹部臓器の障害」により、介護が必要な方
- (具体例:高次脳機能障害による認知機能の低下、重篤な心機能障害など)
条件②:現に「介護」を受けていること
「障害がある」だけでなく、実際に「介護を受けている」事実が必要です。
これには、プロのヘルパー(訪問介護)を利用している場合だけでなく、家族や親族、知人が無償で介護している場合も含まれます。
条件③:病院に入院、または老人ホーム等に入所していないこと
以下の施設を利用している期間は、介護(補償)給付は支給されません。
- 病院・診療所への入院(病院が入院患者の介護を行うため)
- 障害者支援施設への入所(生活介護を受けている場合)
- 特別養護老人ホームへの入所
つまり、基本的には「在宅で介護を受けている期間」が支給の対象となります。
※有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などで、外部の介護サービスを利用している場合は、在宅扱いとして支給対象になる可能性があります。
請求手続きの流れ
介護(補償)給付を受けるには、労働基準監督署への請求が必要です。自動的に振り込まれるものではないため、忘れずに手続きを行いましょう。
手順①:請求書の作成
「介護(補償)給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)」を作成します。
この書類には、以下の内容を記載します。
- 介護を受けた期間(通常は1ヶ月ごと)
- 介護に要した費用
- 介護の内容や回数
手順②:添付書類の準備
- 医師の診断書: 初回請求時や、介護の状態が変わった時などに必要です。「常時」か「随時」かを判断するための医学的証明となります。
- 領収書: 訪問介護サービスなどを利用して費用を支払った場合は、その領収書や明細書を添付します。
手順③:労働基準監督署へ提出
被災者の所属事業場を管轄する労働基準監督署へ提出します。
原則として1ヶ月ごとに請求しますが、数ヶ月分をまとめて請求することも実務上は可能です(ただし、ため込みすぎると資金繰りが苦しくなるためご注意ください)。
期限(時効)について
介護(補償)給付の請求時効は「2年」です。
介護を受けた月の翌月1日から2年経過すると、その月分の請求権は消滅します。毎月のことですので、後回しにせず定期的に申請する習慣をつけましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 障害者手帳の等級とは関係ありますか?
直接の関係はありません。
労災の介護(補償)給付は、あくまで「労災保険における障害等級(または傷病等級)」に基づいて判断されます。身体障害者手帳の等級が1級であっても、労災の認定等級が要件を満たさなければ支給されません(逆に、手帳を持っていなくても労災の等級要件を満たせば支給されます)。
Q2. 家族が介護していますが、本当にお金をもらっていいのですか?
はい、もちろんです。
家族による介護は、愛情に基づくものとはいえ、精神的・肉体的に大きな負担を伴いますし、家族が働く時間を犠牲にしている側面もあります。この給付金は、そうした家族の犠牲に対する正当な補償ですので、遠慮なく受給してください。
Q3. 「常時介護」と「随時介護」の区別はどう決まりますか?
基本的には医師の診断書に基づいて労働基準監督署が決定します。
例えば、「自分一人で食事ができるか」「用便の始末ができるか」「着替えができるか」といった日常生活動作(ADL)の自立度が判断基準となります。もし決定された区分に納得がいかない場合は、弁護士にご相談ください。
Q4. 会社に損害賠償請求をする場合、介護費用はどうなりますか?
非常に重要な点です。
会社に安全配慮義務違反があり、損害賠償請求を行う場合、「将来にわたる介護費用(将来介護費)」を請求できる可能性があります。
裁判基準における将来介護費は、労災の給付額よりも高額になるケースが多く、会社に対して一括で請求することが可能です。
結論:生活を支える権利を活用するために
介護(補償)給付は、重い障害を負われた方とご家族が、住み慣れた自宅で生活を続けるための命綱とも言える制度です。
本記事のポイント
- 対象は、障害(傷病)等級第1級または第2級(精神・胸腹部)の方。
- 入院・施設入所中は支給されない(在宅介護が基本)。
- ヘルパー利用の実費だけでなく、家族介護でも定額が支給される。
- 請求は2年以内に、労働基準監督署へ。
特に、脳の後遺症や脊髄損傷などで重い障害が残った場合、将来の介護費用は数千万円〜億単位にのぼることもあります。労災保険の給付だけでは十分な介護体制を維持できない不安がある場合は、会社に対する損害賠償請求を検討すべきです。
「今の等級で介護給付はもらえるのか?」「常時介護と認められるにはどうすればいいか?」「会社への請求はどうすればいいか?」
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、労災問題に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、被害者の方とそのご家族が、将来にわたって安心して生活できるよう、適正な等級認定と補償獲得をサポートいたします。
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