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労働保険の概要とポイント

はじめに

労働保険とは、労働者を雇用しているすべての事業者が加入する義務のある重要な保険制度です。本記事では、労働保険の基本的な仕組みから具体的な手続き方法、保険料の計算方法までを、弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説いたします。初めて労働保険について学ぶ方や、手続きに不安を感じている事業者の方々にとってご参考となれば幸いです。

労働保険の概要

Q: 労働保険とはどのような制度ですか?

A: 労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の2つの保険を総称したものです。労災保険は、労働者が業務中や通勤中に負傷したり、病気になったりした際に必要な補償を行う保険制度で、医療費の補償や休業時の賃金補償などを含みます。一方、雇用保険は、労働者が失業した場合や、育児休業を取得する際に一定の給付を行う制度です。これら2つの保険を組み合わせることで、労働者の生活を幅広く支える仕組みが形成されています。

Q: 労働保険に加入する義務があるのはどんな事業者ですか?

A: 労働保険への加入は、従業員を1人でも雇用している事業者に課される義務です。法人、個人を問わず、またその業種や規模にかかわらず、労働者が存在する限り、労働保険に加入し、保険料を納付する責任があります。ただし、例外として、5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産業では加入義務がありません。この点は事業を開始する前にしっかりと確認しておく必要があります。

Q: 労働保険と社会保険の違いは何ですか?

A: 労働保険と社会保険は、どちらも労働者を保護するための保険制度ですが、対象とするリスクや補償内容に違いがあります。社会保険は、健康保険や厚生年金保険、介護保険など、労働者が病気や老後に直面するリスクに備えるための保険制度です。これに対し、労働保険は、労災保険と雇用保険のみを含む制度であり、労働中の事故や失業といったリスクに対する補償を行います。労働保険は広義の社会保険の一部とも言えますが、その適用範囲や目的は明確に区別されています。

労働保険加入の手続きと流れ

Q: 労働保険に加入するには何をすればよいですか?

A: 労働保険に加入するためには、まず労災保険の手続きを行い、その後に雇用保険の加入手続きを進める必要があります。具体的には以下の書類を用意し、労働基準監督署やハローワークに提出します。

  • 労働保険関係成立届
    この書類は、事業所が労働保険関係に入ったことを届け出るもので、事業所の基本情報や従業員の数などを記載します。提出期限は、保険関係が成立した日の翌日から数えて10日以内です。
  • 概算保険料申告書
    この書類は、概算で見積もった保険料を申告するためのもので、保険関係成立日の翌日から50日以内に提出する必要があります。
  • 雇用保険適用事業所設置届
    雇用保険の適用を受ける事業所としての届出で、こちらも従業員を雇用した日の翌日から10日以内にハローワークに提出しなければなりません。
  • 雇用保険被保険者資格取得届
    従業員が雇用保険の被保険者として登録されるための届出で、従業員を雇用した月の翌月10日までに提出します。

これらの手続きを確実に行うことで、事業所は労働保険の適用を受けることができ、労働者に対する万が一の備えを整えることができます。

Q: 労働保険の年度更新手続きとは?

A: 労働保険の年度更新手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行われる手続きで、前年度の保険料の精算と新年度の概算保険料の申告・納付が含まれます。この手続きを行わない場合、国が保険料の額を決定し、さらに追徴金が課されるリスクがありますので、必ず期限内に行うようにしましょう。年度更新に必要な書類としては、「労働保険概算・確定保険料申告書」があり、これに基づいて保険料を納付します。

労働保険料の計算方法

Q: 労災保険料はどのように計算しますか?

A: 労災保険料は、以下の計算式を用いて計算します。

労災保険料 = 前年度の全従業員の賃金総額 × 労災保険率

賃金総額には、基本給や賞与、通勤手当、残業手当などが含まれますが、役員報酬や退職金、出張費などは除外されます。また、労災保険率は事業の種類によって異なりますので、厚生労働省が提供する労災保険率表を参照する必要があります。

Q: 雇用保険料の計算方法は?

A: 雇用保険料は、以下の計算式で算出されます。

雇用保険料 = 給与額(賞与額) × 雇用保険料率

給与額とは、所得税や社会保険料を控除する前の額面金額を指します。ただし、役員報酬や退職金、傷病手当金などは給与額に含まれません。雇用保険料率は、事業の種類によって異なり、年度ごとに変動することもあるため、最新の料率を確認して計算することが重要です。

労働保険のよくある質問(Q&A)

Q: 労働保険に加入しなかった場合のリスクは?

A: 労働保険に加入しない場合、事業者は国から厳しい指導を受けることになります。最終的には、国が職権で労働保険への加入手続きを行い、過去の未納分の保険料も含めて徴収されることになります。さらに、追徴金が課されることもあり、事業経営に大きな負担がかかるリスクがあるため、早期に適切な手続きを行うことが必要です。

Q: 労働保険料を期限までに支払わなかった場合はどうなりますか?

A: 労働保険料を期限内に支払わない場合、国からの指導が行われ、それでも支払わない場合には、財産の差押えなどの強制措置が取られる可能性があります。また、未納保険料に対しては年率14.6%の延滞金が加算されるため、遅延なく支払うことが求められます。

弁護士に相談するメリット

労働保険に関する手続き

は複雑であり、適切な処理を怠ると重大なリスクを招く可能性があります。弁護士に相談することで、手続きの煩雑さを軽減し、法的リスクを未然に防ぐことができます。また、労働保険に関するトラブルや不明点についても専門的なアドバイスを受けられるため、安心して事業運営を行うことができます。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労働保険に関するご相談を初回無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

労働保険は、事業者が従業員を守るために加入する義務のある重要な保険制度です。加入手続きや保険料の計算は複雑であり、適切な知識と対応が求められます。弁護士に相談することで、手続きの不備やリスクを回避し、安心して事業を展開することができます。労働保険について不安や疑問をお持ちの方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にぜひご相談ください。

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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