【骨折・むちうち】転倒や事故による骨折・むちうちの労災手続きと後遺障害
はじめに
職場での転倒、事故、または重いものの落下により、骨折やむちうちが発生することがあります。
これらの外傷は、明確な外傷的原因があるため、労災認定されやすい傾向があります。
しかし、後遺症が残った場合の等級認定や損害賠償請求は、複雑な手続を要します。
本解説では、骨折・むちうちの労災認定基準、後遺障害等級の判定、申請手続、そして会社に対する損害賠償請求について説明します。
Q&A
Q1. 職場での転倒による骨折は必ず労災認定されますか?
職場での転倒による骨折は、外傷的原因が明確であり、労災認定されやすい傾向があります。
ただし、労働者の過失(階段の踏み外しなど)が主因である場合、または業務とは関係ない場所での転倒である場合は、認定されない可能性があります。
重要なのは、転倒が「業務に関連した出来事」であるかどうかです。
Q2. むちうちで労災認定を受けることはできますか?
むちうちは、交通事故や追突により首や背中に鞭打つような外傷が生じる場合です。
業務に関連した出来事(配送業務中の交通事故、フォークリフト衝突など)であれば、労災認定される可能性があります。
ただし、医学的にむちうちが診断されることが必要であり、症状が医学的に説明できない場合は、認定が困難になることもあります。
Q3. 骨折・むちうちで後遺症が残った場合、等級認定と損害賠償請求はどうなりますか?
後遺症が残った場合は、労災による後遺障害等級認定を受けることができます。
等級に応じて、後遺障害給付金が支給されます。同時に、会社に対する民事損害賠償請求(慰謝料、逸失利益など)を行うことも可能です。労災給付と損害賠償請求は並行して進めることができます。
解説
骨折・むちうちの外傷的原因と労災認定の基本
骨折やむちうちなどの外傷性疾患は、明確な外傷的原因(転倒、落下、衝突など)を伴うため、労災認定されやすい傾向があります。
労災法では、「業務に関連した出来事」として分類される外傷について、労災保険給付の対象となります。
重要なのは、外傷が「業務遂行中」または「業務に起因した」ものであるかです。職場での転倒、作業中の落下物による負傷、業務に使用する機械への巻き込まれ、配送中の交通事故など、業務に直結した出来事が原因の外傷は、原則として労災認定されます。
一方、労働者の故意的な危険行為(安全装置を外しての作業など)が主因である場合、または業務と無関係な場所での転倒である場合は、認定の判断が異なることがあります。
転倒による骨折の具体的な認定判断
職場での転倒による骨折の労災認定は、転倒の原因が「業務環境に関連しているか」が判断基準となります。
以下のような場合は、労災認定されやすい傾向があります。
- 床面の不整備(階段の段差が不規則、床に物が散乱している、油や水で滑りやすい)が転倒原因の場合
- 安全装置の不備または欠落(手摺がない、照明が不十分)がある場所での転倒の場合
- 業務に使用する機械や道具の操作に伴う転倒の場合
これらの場合は、業務環境の不備または業務上の動作が転倒を招いたと評価され、労災認定されやすいです。
一方、労働者の不注意が主因(スマートフォンを見ながら歩いていた、一人での危険な作業など)である場合は、認定が見送られる可能性があります。
むちうちと医学的診断の困難性
むちうちは、交通事故などの衝突によって、首や背中の軟部組織が損傷する外傷です。
労災認定には、まず「業務に関連した事故」(配送業務中の交通事故、フォークリフト運転中の衝突など)が存在することが必要です。
次に、医学的にむちうちが診断されることが重要です。
むちうちは、医学的にレントゲンやMRIで明確な異常が見られない場合が多く、診断が困難なことがあります。
この場合、医師は臨床診察所見(頸部可動域制限、圧痛、神経学的症状)と患者の症状訴えに基づき、診断を形成します。
医学的に診断の信頼性を高めるため、初期段階でのMRI検査の実施、詳細な病歴聴取、神経学的検査の実施が重要です。
後遺障害等級認定の判定基準と医学的評価
骨折やむちうちで後遺症が残った場合、労災による後遺障害等級認定を受けることができます。
骨折の場合、以下のような点が評価されます。
- 骨癒合の状態(正常に癒合したか、偽関節となっていないか)
- 関節可動域の制限の程度
- 疼痛の有無と程度
- 日常生活への支障の程度
むちうちの場合は、以下の点が評価されます。
- 頸部可動域の制限の程度
- 神経学的症状の有無(しびれ、脱力など)
- 画像検査による医学的所見
- 症状訴えの医学的合理性。
むちうちは後遺障害等級認定が厳しく、医学的に検証可能な所見(神経学的異常、画像異常)が必要とされることが多い傾向があります。
後遺障害等級の等級と給付金額
後遺障害は、第1級から第14級までの等級が定められており、各等級に応じて給付金が支給されます。
骨折で関節機能が著しく制限された場合は第5級から第8級が認定されることがあります。
むちうちによる神経学的症状がある場合は、第12級から第14級が認定されることが多い傾向があります。
給付金は、等級ごとに定められた等級別給付基礎日額を基準に計算されます。
例えば、第8級の場合は給付基礎日額の503日分、第12級の場合は給付基礎日額の100日分が給付されます。
ただし、不支給決定を受けた場合、労働者請求による社会保険審査請求により、再審査を求めることができます。
骨折・むちうち申請時の必要書類と手続
骨折またはむちうちで労災認定を申請する手続は、まず医療機関で診断を受け、医師の診断書を取得することから始まります。
その後、労働基準監督署に「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式5号)を提出します。
提出時には、診断書(医学的所見を詳細に記載したもの)、外傷が発生した具体的な状況を説明する書類、勤務表、事故の目撃者がいる場合はその証言書などが必要です。
後遺症が残った場合は、症状固定後に「後遺障害補償給付請求書」(様式16号の4)を提出し、後遺障害等級認定の申請を行います。
この際、医師の後遺障害診断書(医学的所見と日常生活への支障を詳細に記載したもの)が重要となります。
骨折・むちうちでの損害賠償請求と会社責任
骨折やむちうちで労災認定を受けた場合、労災給付に加えて、会社に対する民事損害賠償請求を行うことが可能です。
会社が労災を招いた環境を改善しなかった、または安全対策を怠った場合、会社の過失が認定される可能性があります。
例えば、床面が危険な状態であることを認識していながら改善しなかった、むちうちを招いた事故が会社の安全管理の不備に起因していた場合などです。
損害賠償請求では、慰謝料、逸失利益(後遺症による就業能力喪失分)、治療費の自己負担分などが請求可能です。
労災給付と民事損害賠償は並行して進めることができ、むしろ労災認定が得られると、会社の過失認定の有力な証拠となり、損害賠償請求も有利になる傾向があります。
弁護士に相談するメリット
外傷性事実の立証と診断医との連携
骨折やむちうちの労災認定では、外傷的原因が明確に立証されることが重要です。
弁護士は、事故当時の状況を詳細に聴取し、目撃者の証言確保、事故現場の写真記録などの証拠を収集します。
同時に、診断医と協力し、医学的に外傷の存在と業務との関連性が明確になるようサポートします。
特にむちうちの場合、医学的診断が困難なことが多いため、適切な画像検査の実施と医学的見地からの診断書作成をサポートすることが重要です。
後遺障害等級認定の戦略的対応
後遺障害等級認定では、医学的所見の記載が決定的な役割を果たします。
弁護士は、後遺障害診断書の記載内容を検討し、医学的に認定基準に合致するよう診断医にサポート提言することで、認定可能性を高めます。
不支給決定を受けた場合も、新たな医学的証拠の取得や、異議申立における再主張により、等級認定を勝ち取る可能性があります。
民事損害賠償請求との並行対応
労災認定と民事損害賠償請求を並行して進めることで、被害者の経済的補償が最大化されます。
弁護士は、会社の過失(安全管理不備、環境改善不履行など)を立証し、慰謝料や逸失利益を請求する民事訴訟を進めます。労災認定されたという事実が、民事訴訟での会社の過失認定を支援することになります。
まとめ
骨折・むちうちの労災認定は、明確な外傷的原因があるため、比較的認定されやすい傾向があります。本解説では、以下の要点をまとめました。
- 外傷的原因の立証:業務に関連した転倒、事故が明確に立証されることで、労災認定されやすくなります。
- むちうちの医学的診断:むちうちは医学的に診断が困難なことが多いため、詳細な医学的検査と診断書作成が重要です。
- 後遺障害等級認定:後遺症が残った場合、等級に応じた給付金が支給されます。医学的所見の記載が等級認定を左右します。
- 損害賠償請求の活用:労災給付と民事損害賠償請求を並行して進めることで、経済的補償を最大化できます。
当事務所では、骨折・むちうち事件について、外傷の立証から後遺障害等級認定、損害賠償請求まで、総合的なサポートを行っています。
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