複数のけがを負った場合、労災の扱いはどうなる?
目次
はじめに
一つの事故で複数の部位にけがを負った場合、労災認定と障害等級(後遺障害等級)の扱いは複雑になることがあります。本記事では、複数のけがが一つの事故に由来する場合の等級認定の考え方、複数の障害が残った場合の評価方法、および損害賠償請求のポイントを解説します。特に複数部位に重い障害が残った場合、適切な等級認定を受けることが重要です。複数のけがをした場合の労災制度の仕組みと、申請時に注意すべき点を理解することが、必要な補償を受けるための第一歩となります。
よくある質問
Q:業務中または通勤中の交通事故で、頭部と脚の両方にけがをした場合、どちらの等級が認定されますか?
複数の障害が残った場合、労災制度では「併合」という方法で最終的な等級を決めることがあります。単に低い方の等級を採用するのではなく、複数の障害を総合して評価します。併合の結果、個別の等級よりも上位の等級となることがあります。例えば、第5級と第7級に該当する障害が残った場合は、原則として併合により第3級となります。もっとも、どの等級になるかは障害の部位・系列・内容によって変わるため、個別の確認が必要です。
Q:同じ部位に複数の障害がある場合(例えば脚の骨折と脚の神経障害)はどうなりますか?
同じ部位や同じ機能に関する複数の障害は、別々に単純加算されるとは限りません。労災では、障害の「系列」や重なり合いを踏まえて、全体としてどの程度の障害が残っているかが判断されます。実質的には、より重い障害を中心に評価されることもあります。ただし、痛み、しびれ、可動域制限などが相互に影響し、労働能力に大きな支障を与えている場合は、その内容を診断書や意見書、検査結果で具体的に示すことが重要です。
Q:複数のけがで複数の等級認定を受けた場合、補償は全て受け取れますか?
労災保険では、複数の障害が残っても、原則として最終的に決定された一つの等級に基づいて障害(補償)等給付を受けます。併合等級で認定された場合は、その併合後の等級が給付額の基準となります。一方、損害賠償請求では、労災給付とは別に、治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料などを検討します。ただし、労災給付との調整や、同じ損害を二重に請求できない点には注意が必要です。
解説
複数のけがにおける労災認定の原則と被災者保護
同一の事故により複数の部位にけがを負った場合、労災保険制度では、まず事故全体が業務災害または通勤災害に当たるかを確認します。一つの事故で同時に発生したけがであっても、業務との関連性や事故状況、医学的因果関係を資料に基づいて判断する必要があります。後遺症が残った場合は、各障害の内容を整理したうえで、障害等級表に照らして等級が検討されます。複数の障害がある場合には「併合」の考え方が用いられることがあり、被災者の労働能力への影響を全体として評価する仕組みになっています。
障害等級の併合ルールと計算方法の詳細
労災の障害等級では、複数の障害がある場合の等級決定方法が定められています。一般的には、重い障害の等級を基準に、一定の条件で等級を繰り上げます。例えば、第5級と第7級の二つの障害がある場合、いずれも第8級以上に当たるため、原則として重い第5級を2級繰り上げ、併合第3級となります。第8級と第9級の場合は、第13級以上の障害が複数あるため、重い第8級を1級繰り上げ、併合第7級となります。もっとも、同じ部位・同じ系列の障害は単純な併合にならないことがあるため、医学的資料を踏まえた確認が必要です。
複数のけがの想定事例と認定過程及び医学的根拠
建設現場での転落事故:高さ3メートルから転落し、脚の複雑骨折(第8級)と腰椎の圧迫骨折(第10級)が残った場合、併合により第7級となる可能性があります。脚だけの障害であれば第8級相当でも、別の部位に障害が残ることで、最終的な等級が上位になることがあります。このような認定には、画像所見、可動域測定、神経学的所見など、障害ごとの医学的根拠が重要です。
自動車事故での複合損傷:頚椎捻挫(むちうち)による神経症状(第12級)と腰部の椎間板ヘルニアに伴う神経症状(第11級)が残った場合、併合により第10級となる可能性があります。ただし、いずれの症状も事故との因果関係や症状の一貫性、画像所見・神経学的検査との整合性が問題になります。複数の医療機関で治療を受けた場合は、診断内容に矛盾がないよう資料を整理することが大切です。
製造業での機械事故:腕の挫滅損傷により腕の機能障害(第7級)と、複雑性局所疼痛症候群(CRPS)による神経症状(第12級)が残った場合、併合により第6級となる可能性があります。CRPSは症状や検査所見の評価が難しいこともあるため、疼痛の経過、関節可動域、皮膚温・色調の変化、神経学的検査などを丁寧に整理する必要があります。全ての障害を正確に診断し、医師の診断書等に反映してもらうことが重要です。
申請手続と複数障害の証拠提出及び医療機関との連携
複数のけがによる障害(補償)等給付の請求では、各部位の障害について診断書を取得し、検査画像、可動域測定結果、神経学的所見、治療経過などの医学的資料を整理することが重要です。請求書には、残っている障害を漏れなく記載します。複数の医療機関で治療を受けた場合には、それぞれの診断内容や検査結果がどの障害を裏付けるものかを整理し、矛盾がある場合はその理由を確認しておく必要があります。医師に対しては、日常生活や仕事への支障を具体的に伝えることも大切です。
複数のけがと損害賠償請求の注意点及び補償額の検討
複数のけががある場合、労災給付に加えて、安全配慮義務違反や第三者の不法行為などを理由に損害賠償請求を検討できることがあります。損害賠償では、各部位の障害が生活や仕事に与える影響を具体的に主張します。ただし、逸失利益は労働能力への影響を全体として評価するため、各部位ごとに機械的に合算できるとは限りません。また、自宅改修費用、介護費用、福祉用具購入費などは、逸失利益とは別の損害項目として検討します。労災給付との控除関係も踏まえ、重複のない整理が必要です。
弁護士に相談するメリット
併合等級の確認と申請準備のサポート
弁護士は、複数のけがにおける併合ルールや同一系列の扱いを踏まえ、どの障害をどのように整理すべきかを検討します。医師の診断書、検査結果、治療経過、事故状況の資料を確認し、申請時に不足しやすい資料を補うための準備をサポートします。等級認定は医学的資料の内容に大きく左右されるため、早い段階から整理しておくことが重要です。
複数障害による損害賠償の整理と請求額計算
複数の障害がある場合、労災給付だけでは十分に回復されない損害が残ることがあります。損害賠償請求では、後遺障害による逸失利益、慰謝料、将来の治療費・介護費用、装具費用などを、重複しないように整理して請求額を検討します。過去の裁判例や実務上の基準を参考にしながら、事案に応じた適切な請求内容を組み立てます。
医療機関との連携と資料整理及び不服申立て
複数の医療機関で治療を受けている場合、各医師の診断内容や検査結果の位置づけを整理し、認定資料として分かりやすく提出することが重要です。弁護士は、必要に応じて医療照会や資料整理をサポートし、障害の内容が伝わりやすい形に整えます。初回認定に不服がある場合には、審査請求等の不服申立てを検討します。
まとめ
- 複数のけががある場合、労災の障害等級では「併合」のルールにより、個別の等級より上位の等級となることがあります。ただし、同じ部位・同じ系列の障害は単純な併合にならない場合があります。
- 適切な等級認定には、各部位の障害が医師により正確に診断され、診断書や検査資料に反映されることが重要です。複数の医療機関の資料は、矛盾がないよう整理する必要があります。
- 労災給付に加えて、事案によっては損害賠償請求を検討できます。逸失利益、慰謝料、介護費用、自宅改修費用などを、重複しないように整理することが大切です。
- 弁護士に相談することで、併合等級の確認、必要資料の整理、損害賠償請求、不服申立てまで一貫したサポートを受けることができます。複数部位の障害がある場合は、早めの相談が有用です。
被災者の権利を守るため、まずは弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。当事務所では、労災認定から損害賠償請求まで、必要な補償を受けるためのサポートを行っています。
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