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【アスベスト・じん肺】職業がんやアスベスト関連疾患の労災認定と救済制度

はじめに

建設業、造船業、機械製造業などで働いた労働者が、長年の職業的暴露により、アスベスト関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫)やじん肺などの職業性疾患を発症することがあります。

これらの疾患は、一般的に長期の潜伏期を経て発症し、労災認定の判断では職業暴露の事実と医学的診断が重要となります。

本解説では、アスベスト関連疾患とじん肺の労災認定基準、認定手続、救済制度、そして損害賠償請求について説明します。

Q&A

Q1. アスベスト関連疾患は必ず労災認定されますか?

アスベスト関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫)は、職業的にアスベストに暴露した労働者が発症した場合、労災認定されやすい傾向があります。

ただし、認定されるには、職業暴露の事実(就業期間、職種、作業内容)を証明し、医学的に当該疾患がアスベスト暴露により発症したことが認定される必要があります。

Q2. じん肺で労災認定を受けるために必要な条件は何ですか?

じん肺の認定には、粉塵吸入作業に従事した職業暴露の事実、その期間(原則として3年以上)、医学的にじん肺が診断されることが必要です。

医学的診断には、特定の粉塵(珪酸塵など)への暴露がもたらした特異的な肺の変化が、画像検査(胸部レントゲン)で確認されることが重要となります。

Q3. アスベスト暴露から発症まで数十年経過している場合でも労災認定されますか?

アスベスト関連疾患やじん肺は、一般的に長期の潜伏期(数十年)を経て発症します。潜伏期の長さは労災認定を妨げません。

重要なのは、過去の職業暴露の事実を証明し、医学的に当該疾患が職業暴露により発症したことが認定されることです。

過去の勤務地、職種、作業内容を示す客観的証拠があれば、労災認定されやすくなります。

解説

アスベスト関連疾患の種類と認定基準

アスベスト関連疾患は、複数の疾患により構成されています。石綿肺は、アスベスト繊維の長期吸入により肺線維化が生じる疾患で、胸部レントゲンで特異的な肺線維化像が確認されることで医学的に診断されます。

肺がんは、喫煙歴の有無にかかわらず、アスベスト暴露により発症リスクが大幅に上昇する悪性腫瘍です。

中皮腫は、胸膜または腹膜に発症する悪性腫瘍で、アスベスト暴露との因果関係が特に強いとされています。

労災認定では、これらの疾患のいずれかが医学的に診断され、職業的アスベスト暴露の事実が立証されることが必要です。

認定基準では、職業暴露の期間、作業環境、暴露量の推定などが評価されます。

アスベスト使用禁止前の就業であれば、暴露の事実を推定しやすいという有利な点があります。

じん肺の認定基準と粉塵暴露の証明

じん肺は、粉塵(珪酸塵、石綿、金属粉塵など)への長期暴露により、肺に線維化が生じる疾患です。

労災認定には、以下の条件が必要とされます。

  1. 粉塵吸入作業に従事した職業歴が存在し、その期間が原則として3年以上であること
  2. 当該粉塵への暴露が認定基準上「著しい粉塵」であること
  3. 医学的にじん肺が診断されること

医学的診断には、胸部レントゲン検査で特異的な肺線維化像(小さな陰影が両肺に散在する)が確認されることが重要です。

ILO国際分類により、じん肺の進行度が第1型から第4型まで分類されます。

第1型以上であれば、じん肺と診断されやすい傾向があります。ただし、非特異的な肺線維化像のみの場合は、診断が困難になることがあります。

職業暴露の事実立証と過去勤務地の記録

アスベスト関連疾患またはじん肺の労災認定では、過去の職業暴露の事実を立証することが重要です。

労働者が数十年前に就業していた場合、会社の雇用記録、給与明細、健康診断記録、当時の勤務先からの証明書などが有力な証拠となります。

これらの記録が存在しない場合、労働者の日記、同僚の証言、公開されている業界情報(当時の製造工程、使用材料など)を組み合わせることで、職業暴露の事実を立証することができます。

特に、アスベスト使用禁止前の就業期間(1970年代から1980年代など)であれば、その時期の就業だけで暴露の可能性が高いと推定される場合があります。

建設業、造船業、機械製造業など、アスベスト使用が一般的であった業種への就業経歴があれば、暴露の蓋然性が高いと評価されます。

アスベスト肺がん・中皮腫の医学的判断と因果関係

アスベスト暴露により肺がんが発症した場合の労災認定は、以下の点が判断されます。医学的にアスベスト関連肺がんと推定される場合、労災認定されやすい傾向があります。

特に、石綿肺が併存する場合は、アスベスト暴露と肺がんの因果関係が推定されます。

喫煙歴がある場合も、アスベスト暴露が肺がんリスクを大幅に増加させることから、労災認定が妨げられません。

中皮腫は、アスベスト暴露との因果関係が強い疾患であり、職業暴露の事実が立証されれば、労災認定される傾向が高いです。中皮腫の患者の約80%に職業的アスベスト暴露歴があるとされており、医学的に特異性の高い疾患です。

じん肺認定後の進行と予防的給付

じん肺と認定された労働者は、病状の進行を防ぐため、粉塵作業からの離脱が重要です。

労災認定後、じん肺の進行度が高まった場合、より高い等級の給付金が支給される場合があります。

じん肺は慢性疾患であり、年数とともに肺機能が低下することが予想されるため、定期的な医学管理と就業環境の改善が必要とされます。会社は、じん肺認定労働者に対して、粉塵作業からの配置転換など、病状進行を防ぐための措置を講じる義務があります。これを怠った場合、会社の過失が認定される可能性があります。

アスベスト関連疾患・じん肺の給付と損害賠償請求

アスベスト関連疾患またはじん肺で労災認定を受けた場合、療養給付(治療費の全額補償)、休業補償給付(給与の80%相当額)が得られます。疾患が重度で労働が不可能な場合は、傷病補償年金の対象となります。

また、後遺症が残った場合は、障害等級に応じた障害補償給付が支給されます。ただし、アスベスト関連疾患やじん肺は、労災給付のみでは不十分な場合が多いため、会社に対する民事損害賠償請求が重要です。

会社がアスベスト危険性を認識していながら、適切な安全対策(防塵マスク供給、除塵設備整備など)を実施しなかった場合、会社の過失が認定される可能性があります。この場合、慰謝料および逸失利益の請求が可能です。

特に、会社が危険性を認識していた場合、請求額が大きくなる傾向があります。

アスベスト給付制度と特別な救済措置

労災保険給付とは別に、アスベスト関連疾患に対する特別な救済制度が存在します。労災保険給付を受けられない労働者(家族従事者、退職後の発症など)に対しても、環境再生保全機構による「アスベスト健康被害救済給付」が支給される場合があります。この制度により、指定疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫など)と認定された場合、医療費、医療手当が支給されます。

また、アスベスト製品の製造企業に対する集団訴訟が複数提起されており、企業の責任が認定された場合、製造企業からの和解金を得ることができるケースもあります。

これらの制度や訴訟機会を最大限活用することで、被害者の経済的補償が拡大されます。

弁護士に相談するメリット

職業暴露の事実立証と過去記録の掘り起こし

アスベスト関連疾患やじん肺の認定では、数十年前の職業暴露の事実を立証することが重要です。

弁護士は、会社の雇用記録、健康診断記録、同僚の証言、業界情報など、多角的な視点から職業暴露の事実を立証するサポートを行います。特に、当時の製造工程や建設工法などを調査し、暴露の蓋然性を高める証拠を収集するサポートが可能です。

医学的診断と認定基準の整合性確保

医学的診断が認定基準に合致することが、労災認定の鍵となります。

弁護士は、医師と協力し、胸部レントゲン検査やCT検査の適切な実施、医学的所見の記載内容を検討し、認定基準に基づいた診断書作成をサポートします。

アスベスト関連疾患の場合、石綿肺の併存が肺がん認定に有利に作用することなど、医学的戦略についても専門家としてアドバイス可能です。

給付制度の最大活用と損害賠償請求の並行対応

労災保険給付のみならず、アスベスト特別給付制度や企業に対する民事損害賠償請求など、複数の制度を組み合わせることで、被害者の経済的補償を最大化することができます。

弁護士は、労災認定申請、異議申立、民事訴訟、集団訴訟への参加など、多角的なアプローチにより、被害者の権利をサポートします。

まとめ

アスベスト関連疾患やじん肺の労災認定は、過去の職業暴露の事実立証と医学的診断が重要です。本解説では、以下の要点をまとめました。

  1. 職業暴露の立証:数十年前の就業記録、同僚の証言、業界情報などから、職業暴露の事実を多角的に立証することが重要です。
  2. 医学的診断:胸部レントゲン検査で特異的な肺線維化像が確認されること、医学的にアスベスト関連疾患またはじん肺が診断されることが認定の条件です。
  3. 長期潜伏期への対応:発症まで数十年を要することは珍しくなく、潜伏期の長さは認定を妨げません。
  4. 特別な救済制度の活用:労災保険給付とは別に、アスベスト特別給付制度や企業に対する損害賠償請求により、補償を拡大できます。

当事務所では、アスベスト関連疾患やじん肺の労災認定について、多数の相談実績があります。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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