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労災後遺障害10級の損害賠償と給付金について詳しく解説

はじめに

労働災害に遭い、後遺障害が残ってしまった場合、その後の生活に大きな影響を及ぼすことになります。特に、10級の後遺障害が認定された場合には、どのような補償を受けられるのか、また損害賠償額がどれくらいになるのかをしっかり理解しておくことが重要です。この記事では、労災による後遺障害10級の損害賠償と給付金について解説します。

 1. 労災後遺障害10級とは?

Q1. 労災で10級の後遺障害とはどのような状態ですか?

労災で後遺障害10級が認定されるケースは、労働者災害補償保険法施行規則に基づく障害等級表によって定義されています。具体的には、「片眼の視力が0.1以下に低下した場合」や「片耳の聴力が大声でしか理解できない程度に低下した場合」などが該当します。これらの状態は、日常生活や仕事に支障をきたし、生活の質に大きな影響を与えます。

2. 労災後遺障害10級で取得できる損害賠償項目

Q2. 労災事故で受け取れる損害賠償にはどのような項目がありますか?

労災事故による損害賠償は、以下の項目が含まれます。

  • 治療費: 事故によるケガや病気の治療にかかる費用
  • 休業損害: 事故により仕事ができず、収入が減少した分の補償
  • 入通院慰謝料: 通院や入院による精神的苦痛に対する補償
  • 後遺障害慰謝料: 後遺障害が残った場合の精神的苦痛に対する補償
  • 逸失利益: 後遺障害により将来の収入が減少することに対する補償

これらの損害賠償は、事故の影響を受けた労働者にとって重要な補償手段です。特に、長期にわたる治療や仕事への影響を考慮すると、正確な賠償額を受け取ることが生活の安定に繋がります。

Q3. 労災保険からの給付内容について教えてください。

労災保険からは、以下の給付が受け取れます。

  • 療養(補償)給付: ケガや病気の治療費、入院費、移送費などが対象となります。
  • 休業(補償)給付: 労災事故により働けなくなった際に支給される給付です。
  • 障害(補償)給付: 後遺障害が残った場合に支給される給付です。
  • 傷病(補償)年金: 治療開始から1年6か月が経過しても治癒しない場合に支給されます。

これらの給付は、被災労働者にとって重要な経済的支援となりますが、慰謝料の支払いは労災保険からは行われないため、別途損害賠償請求が必要です。

3. 労災後遺障害10級の慰謝料

Q4. 後遺障害10級が認定された場合、慰謝料はいくらになりますか?

後遺障害10級が認定された場合、後遺障害慰謝料として一般的に550万円が相場となります。また、入通院慰謝料として、事故の状況や通院期間に応じて100万円〜200万円程度が支払われることが多いです。この金額は、従業員が被った精神的苦痛に対する賠償として、弁護士基準に基づいて算出されます。

Q5. 具体的な入通院慰謝料の計算方法を教えてください。

入通院慰謝料の金額は、通院期間や入院期間、ケガの程度によって変わります。例えば、右手の親指を骨折し、210日間(約7か月間)通院が必要だった場合、慰謝料は124万円となる可能性があります。このように、実際のケガの内容や治療期間を考慮して慰謝料が算出されます。

4. 労災後遺障害10級の逸失利益

Q6. 逸失利益とは何ですか?

逸失利益とは、労災事故による後遺障害が原因で将来得られなくなる収入を指します。被災した従業員が、事故前と同じように働けなくなった場合、将来にわたる収入の減少を補償するための金額が逸失利益です。逸失利益は、次のように計算されます。

  • 収入金額(年収) × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

たとえば、年収600万円で労働能力喪失率が27%とされた場合、42歳の労働者の逸失利益は約2821万円となります。この計算は、就労可能年数を考慮したライプニッツ係数を用いて行われます。

Q7. 労働能力喪失率とはどのように決まりますか?

労働能力喪失率は、後遺障害等級に基づいて決定されます。10級の場合、一般的には27%の労働能力喪失率が認められます。これは、事故前に比べて27%程度の労働能力が失われたと判断されることを意味します。

5. その他の賠償金について

Q8. その他に請求できる賠償項目はありますか?

入通院慰謝料や逸失利益の他にも、以下のような賠償項目が請求可能です。

  • 通院交通費: 通院にかかる交通費(自家用車の場合は1kmにつき15円、公共交通機関の場合は実費)
  • 入院雑費: 入院中に必要な日用品の費用(1日あたり1500円)
  • 入院付添費・通院付添費: 付き添いが必要な場合の費用(入院付添費は1日6500円、通院付添費は1日3300円)

これらの賠償項目も、会社に対する損害賠償請求の一環として、請求することが可能です。

6. 労災後遺障害10級に認定された場合の対応ポイント

Q9. 労災事故後、どのような対応が重要ですか?

労災事故後には、過失相殺の主張に注意する必要があります。過失相殺とは、事故の原因に労働者本人にも責任があるとされた場合、損害賠償額が減額されることを指します。また、会社側が提示する示談内容は、法的に不適切な場合があるため、必ず専門家に確認してもらうことが大切です。

Q10. 弁護士に相談するメリットについて教えてください。

労災事故後の示談交渉や賠償請求には、専門的な知識が必要です。弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 適切な賠償額の算出: 弁護士が裁判所基準に基づき賠償額を見積もり、示談交渉を代行します。
  • 会社との交渉を代行: 被害者やその家族に代わって、弁護士が会社とのやり取りを行い、精神的負担を軽減します。
  • 労災申請のサポート: 労災申請書類の作成や手続きの代行も可能です。
  • 後遺障害等級の適切な認定: 診断書のチェックや必要な意見書の作成など、適切な後遺障害等級認定をサポートします。

7. 労災後遺障害10級に関するQ&A

Q11. 労災で後遺障害10級に認定された場合、一時金はいくら受け取れますか?

労災で後遺障害10級に認定された場合、労災保険から支給される一時金は以下のとおりです。

  • 障害補償一時金: 302日分
  • 障害特別一時金: 39万円
  • 障害特別支給金: 302日分

合計で約619万円が支給される場合があります。

 

まとめ

労災で10級の後遺障害が認定された場合、適切な賠償を受け取るためには、損害項目や給付内容を正確に理解することが重要です。特に、過失相殺や示談交渉では専門的な知識が求められるため、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労災事故に関する相談を受け付けていますので、お困りの際はぜひご相談ください。

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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