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労災における骨折の後遺障害:認定基準から損害賠償請求まで解説

はじめに

労働災害(労災)による骨折は、労働者にとって非常に深刻な問題です。特に鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨、骨盤骨のような主要な骨が損傷を受け、後遺障害が残った場合、その影響は長期にわたり、日常生活や仕事に大きな制約をもたらします。本記事では、労災による骨折が引き起こす後遺障害について、認定基準や損害賠償請求の方法について解説します。また、適切な対応を行うために弁護士に相談するメリットについても紹介します。

Q&A

Q: 労働災害とは何ですか? 

A: 労働災害(労災)とは、労働者が仕事中または通勤中に遭遇した事故や疾病のことを指します。これには、仕事中に発生したケガや病気だけでなく、通勤中の交通事故による負傷なども含まれます。

Q: 労災で骨折した場合、どのような補償が受けられますか? 

A: 労災による骨折で後遺障害が残った場合、労災保険から「療養補償給付」「休業補償給付」「傷病補償年金」「障害補償給付」などの補償が受けられます。これにより、治療費や休業中の生活費をカバーすることが可能です。

Q: 骨折により後遺障害が残った場合の等級は? 

A: 骨折による後遺障害等級は、障害の程度や範囲により異なります。たとえば、鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨、骨盤骨の骨折による後遺障害では、12級5号や12級12号、14級9号といった等級が認定される可能性があります。

Q: 労災保険だけでは補償が不十分な場合、どうすればよいですか? 

A: 労災保険の補償が不十分な場合、会社に対して「安全配慮義務違反」に基づく損害賠償請求を行うことが可能です。これにより、逸失利益や慰謝料を追加で請求することができます。

Q: 弁護士に相談することで、どんなメリットがありますか? 

A: 弁護士に相談することで、適正な後遺障害等級の認定や、正確な損害賠償額の算定、会社との示談交渉を有利に進めることができます。また、裁判に発展した場合も、弁護士が代理人として対応することができます。

労災保険の基礎知識と後遺障害等級

労災保険は、業務中や通勤中に発生した事故によって労働者が負ったケガや病気に対して補償を行うための保険制度です。労災による骨折は、しばしば後遺障害を引き起こし、その結果、長期的な生活への影響が懸念されます。後遺障害が残った場合、労災保険により障害等級が認定され、それに基づいて補償が支給されます。

労災保険の特徴

労災保険は労働基準法や労働者災害補償保険法に基づいて運営され、労働者の安全と健康を保護するための重要な制度です。被災者は労災保険を通じて、治療費の補償や休業中の生活費、後遺障害が残った場合の補償を受けることができます。また、労災保険は、従業員を一人でも雇用している事業主には加入が義務付けられており、雇用形態に関係なく適用されます。

骨折による後遺障害等級

骨折が原因で後遺障害が残った場合、その障害の程度や部位に応じて障害等級が認定されます。鎖骨・胸骨・肋骨・肩胛骨・骨盤骨の骨折の場合、次のような等級が認定される可能性があります。

  • 12級5号:鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨、骨盤骨に著しい変形が残る場合。これは、裸体になったときに変形が明らかにわかる程度の障害がある場合に適用されます。
  • 12級12号:局部にがん固な神経症状が残る場合。神経学的検査などで障害の存在が他覚的に証明されることが必要です。
  • 14級9号:局部に神経症状が残る場合。この等級は、障害の存在が医学的に説明できるが、他覚的な証明が難しい場合に適用されます。

これらの等級は、後遺障害慰謝料の金額や、その他の補償額に大きく影響を与えます。そのため、適切な等級が認定されるよう、専門的なサポートを受けることが重要です。

労災保険での補償内容

労災保険からは、様々な補償が支給されます。以下は主な補償内容です。

  • 療養補償給付:治療に対する補償で、診察、薬品、手術などの医療費がカバーされます。
  • 休業補償給付:ケガや病気のために労働ができない期間に支給される補償で、休業4日目から休業が続く限り支給されます。
  • 傷病補償年金:治療開始後1年6か月が経過しても治癒しない場合に支給される年金です。
  • 障害補償給付:治癒後も後遺障害が残った場合に支給されます。等級に応じて金額が異なります。
  • 介護補償給付:後遺障害が1級または2級で、常時介護が必要な場合に支給されます。
  • 遺族補償年金:労働者が労災事故で死亡した場合、遺族に支給される年金です。
  • 葬祭料:労働者が死亡した際の葬儀費用として支給されます。

これらの補償は、労災による経済的な負担を軽減するために重要な役割を果たします。

労災での損害賠償請求

労災保険から支給される補償だけでは、被災者が受けるべき損害賠償が不足する場合があります。その場合、会社に対して損害賠償請求を行うことができます。これは、会社が「安全配慮義務」に違反していたと認められる場合に可能です。

損害賠償請求の法的根拠

労働契約法第5条では、使用者(会社)には労働者の生命や身体の安全を確保するための配慮義務があると定められています。また、労働安全衛生法第24条では、事業者は労働者の作業による災害を防止するための必要な措置を講じなければならないとされています。これらの法律に基づいて、労災事故に対する損害賠償請求が可能です。

 

損害賠償の対象項目

損害賠

償請求では、以下の項目が主な対象となります。

  • 治療費:医療機関での治療費用。
  • 通院交通費:通院にかかる交通費。
  • 休業損害:治療のために仕事を休んだ期間の収入の補償。
  • 慰謝料:精神的な苦痛に対する補償。
  • 逸失利益:後遺障害により将来得られるはずだった収入の補償。
  • 葬儀費用:死亡した場合の葬儀費用。
  • 装具・器具購入費:必要な医療器具や装具の購入費用。
  • 自宅・自動車改造費:後遺障害による生活の制約に対応するための住宅や車の改造費用。

特に「慰謝料」と「逸失利益」は金額が大きくなることが多く、適正な相場を知っておくことが重要です。

慰謝料の種類と相場

労災による慰謝料には、「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」と「後遺障害慰謝料」の2種類があります。

  • 傷害慰謝料:ケガの治療のために入通院した際の精神的苦痛に対する補償です。期間や症状に応じて金額が決まります。
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害が残った場合に支払われる慰謝料で、等級に応じた相場があります。

たとえば、後遺障害等級1級の慰謝料は2800万円、14級では110万円とされています。会社との示談交渉では、提示金額が相場よりも低いことがあるため、適切な交渉が必要です。

後遺障害逸失利益とその計算

後遺障害逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られるはずだった利益(収入)のことを指します。休業損害が現在の収入に対する補償であるのに対し、逸失利益は将来にわたる補償です。計算には以下のような式が用いられます。

基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入額は、被災者が事故前に得ていた収入額を基にします。労働能力喪失率は、後遺障害の等級に応じて設定され、喪失期間は通常、被災者の定年までの年数を指します。ライプニッツ係数は、将来の収入を現在価値に換算するための係数です。

過失相殺に注意

労災事故の損害賠償請求において、過失相殺が適用されることがあります。過失相殺とは、事故の発生における双方の過失の割合に応じて、損害賠償額が減額されることを指します。たとえば、労働者側に20%の過失が認められた場合、損害賠償額が20%減額されます。このため、過失割合の主張が会社側から出されることが多く、交渉が難航することがあります。

弁護士に相談するメリット

労災の損害賠償問題では、専門的な知識と経験が求められます。弁護士に相談することで、次のようなメリットが得られます。

  • 適正な後遺障害等級の認定サポート:後遺障害等級の認定には、詳細な医療記録や診断書が必要です。弁護士は、これらの資料を整え、適正な等級が認定されるようにサポートします。
  • 正確な損害賠償額の算定:損害賠償額の計算は複雑であり、誤った計算をすると補償が不十分になる可能性があります。弁護士は、適正な賠償額を算定し、交渉を有利に進めます。
  • 会社との示談交渉の代理:労災事故の被災者が一人で会社と示談交渉を行うのは難しいことが多いです。弁護士が代理人として交渉を行うことで、被災者の権利を守り、適正な補償を得ることができます。
  • 裁判による解決のサポート:示談交渉が決裂した場合、裁判での解決を目指すことになります。弁護士は、裁判における戦略を立て、最良の結果を得るために行動します。

労災の損害賠償問題は、会社側の主張や法的手続きが複雑であり、被災者にとって大きな負担となります。弁護士に依頼することで、法的サポートを受けながら最適な解決策を見つけることができます。

まとめ

労災による骨折は、日常生活や仕事に深刻な影響を与える可能性があります。適正な補償を受けるためには、労災保険の利用や損害賠償請求が重要です。また、弁護士に相談することで、複雑な手続きや交渉をスムーズに進めることができ、被災者の権利を守ることができます。労災に遭遇した際には、早期に適切な対応を行い、必要であれば専門家の助けを借りることもご検討ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労災に関する無料相談を随時受け付けています。
お困りの際は、ぜひご相談ください。

この記事を書いた人

弁護士法人 長瀬総合法律事務所

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