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労災における脊髄損傷の後遺障害:認定基準から損害賠償請求まで解説

はじめに

労災で脊髄損傷を負った場合、被災者やその家族はさまざまな不安に直面します。脊髄損傷が引き起こす後遺症や、その結果生じる生活の変化、さらに労災保険や損害賠償の手続きなど、考えなければならないことは多岐にわたります。本記事では、脊髄損傷の症状や合併症、労災保険の補償内容、そして損害賠償請求に至るまでの手続きを解説します。適切な補償を受けるためのポイントや、弁護士に相談することの重要性についても触れています。

Q&A

Q1: 脊髄損傷とはどのような状態ですか?

A1: 脊髄損傷とは、脊髄が何らかの理由で損傷し、運動機能や感覚が失われる状態です。この損傷は、日常生活に大きな支障をきたし、場合によっては呼吸や消化器などの内臓機能にも影響を及ぼします。脊髄損傷は、その程度により「完全型」と「不完全型」に分類されます。完全型では、損傷した部分の下位の運動機能や感覚が完全に失われます。一方、不完全型では一部の機能が残ることがありますが、いずれの場合も重篤な状態であり、長期的なリハビリテーションが必要となります。

Q2: 労災で脊髄損傷を負った場合、どのような補償が受けられますか?

A2: 労災で脊髄損傷を負った場合、労災保険を通じてさまざまな補償が受けられます。最初に受けられるのは「療養給付」で、治療に必要な医療費が全額補償されます。また、休業中の収入が補償される「休業給付」もあります。さらに、後遺障害が残った場合には、その程度に応じて「障害給付」が支給されます。これらの給付は、労災保険の申請手続きを行うことで受け取ることができます。労災認定のプロセスが終わり、後遺障害等級が確定すると、それに基づいた補償額が決まります。

Q3: 慰謝料の金額はどのように決まりますか?

A3: 慰謝料は、後遺障害等級に応じて支払われる金額が決まります。労災保険の補償に加えて、会社の責任が認められる場合には、損害賠償として慰謝料を請求することが可能です。例えば、最も重い1級に認定された場合、慰謝料は2800万円程度に達する可能性があります。慰謝料の金額は、被災者の生活にどれだけの影響を与えたか、また将来にわたってどの程度の支援が必要かによっても変わります。弁護士に相談することで、適切な金額を受け取るためのアドバイスを受けることができます。

Q4: 労災保険と損害賠償請求の違いは何ですか?

A4: 労災保険は、労働者が業務中に負った傷害や病気に対する公的な補償制度です。労災保険による補償は、被災者が医療費を負担せずに治療を受けられるようにすることや、休業中の収入を補填することが目的です。しかし、労災保険だけでは、被災者が受けた精神的苦痛や将来にわたる生活への影響を十分に補償できない場合があります。この場合、会社の安全管理に不備があったと認められる場合に、損害賠償請求を行うことができます。損害賠償請求では、慰謝料や逸失利益(将来得られるはずだった収入の補償)を請求することができ、労災保険ではカバーされない部分を補填することができます。

脊髄損傷による労災事故の具体例

脊髄損傷を引き起こす労災事故は、現場での作業中に発生することが多く、その主な原因には以下のようなものがあります。

  • 墜落・転落事故: 高所作業中に足場から転落して脊髄を損傷する事故が最も多く報告されています。例えば、トラックの荷積み中に梯子から転落したり、建設現場で足場から落ちたりするケースです。高さが低い場所からの転落でも、脊髄損傷を引き起こすことがあり、注意が必要です。
  • 転倒事故: 濡れた床や油のこぼれた作業場で滑り、転倒して脊髄を損傷する事故も多く見られます。例えば、工場内で荷物を運搬中に足を滑らせて転倒し、背骨を強打することが原因となることがあります。
  • はさまれ・巻き込まれ事故: 重機や機械の操作中に、体の一部が挟まれたり巻き込まれたりして脊髄を損傷するケースです。これらの事故は、特に重篤な障害を引き起こす可能性が高く、適切な安全対策が必要です。

これらの事故は、いずれも作業中の安全管理が不十分であったり、作業手順が適切でなかったりする場合に発生することが多いです。労働者が安心して働ける環境を提供するためには、適切な安全対策を講じることが不可欠です。

脊髄損傷による症状と合併症

脊髄損傷は、その部位や損傷の程度によってさまざまな症状を引き起こします。主な症状には以下のようなものがあります。

  • 運動障害: 脊髄の損傷によって、手足が動かなくなったり、筋力が低下したりします。完全型では、損傷した部分の下位の運動機能が完全に失われますが、不完全型では一部の機能が残ることがあります。
  • 感覚障害: 脊髄損傷によって、感覚が鈍くなったり、しびれや痛みを感じたりすることがあります。損傷した部位によっては、全く感覚がなくなることもあります。
  • 自律神経障害: 脊髄損傷が原因で、自律神経が正常に機能しなくなり、血圧の異常や体温調節の障害、心拍数の異常などが発生することがあります。
  • 排尿・排便障害: 脊髄の損傷により、排尿や排便が自力で行えなくなることがあります。これは、膀胱や直腸を制御する神経が損傷されるためです。
  • 呼吸障害: 損傷部位が高位である場合、呼吸を制御する神経も損傷され、自発呼吸が困難になることがあります。

また、脊髄損傷は合併症を引き起こすこともあります。例えば、以下のようなものがあります。

  • 尿路感染症: 排尿障害によって、膀胱に尿がたまることで感染が生じやすくなります。
  • 褥瘡(じょくそう): 感覚麻痺や自力での体位変換が困難な場合、皮膚に圧力がかかり続けることで、褥瘡が生じることがあります。
  • 消化器の機能低下: 腸の動きが鈍くなり、腸閉塞を引き起こすことがあります。
  • 深部静脈血栓症: 長時間の安静や運動不足により、血流が滞りやすくなり、深部静脈に血栓ができることがあります。

これらの症状や合併症は、脊髄損傷の重症度や損傷部位により異なりますが、いずれも日常生活に大きな影響を及ぼします。適切な医療ケアとリハビリテーションが必要であり、長期的な支援が不可欠です。

労災保険給付の詳細と損害賠償請求

労災保険による補償は、主に以下の6種類に分類されます。

  • 療養給付: 労災により脊髄損傷を負った場合、治療にかかる費用は全額労災保険で補償されます。これには、手術費用や入院費、リハビリテーション費用などが含まれます。
  • 休業給付: 労災で仕事を休まざるを得なくなった場合、その間の収入を補填するための給付です。基本的には給料の80%が支給されますが、条件によってはさらに上乗せされることもあります。
  • 障害給付: 治療が終了しても後遺症が残った場合、その程度に応じて支給される給付金です。後遺障害等級が認定され、その等級に基づいて補償金額が決まります。
  • 傷病給付: 労災による傷病が長引き、休業給付の対象期間を超えた場合に支給される給付です。療養が1年6か月以上続く場合に適用されます。
  • 介護給付: 重度の障害を負った場合に、日常生活の介護を必要とする場合に支給される給付です。介護の内容や必要度に応じて、支給額が決まります。
  • 遺族給付: 労災事故で亡くなった場合、遺族に対して支給される給付金です。家族構成や遺族の生活状況に応じて支給額が異なります。

これらの給付に加え、会社に安全配慮義務の不履行があった場合には、損害賠償請求が可能です。労災保険ではカバーしきれない部分を、損害賠償請求によって補うことができます。具体的には、慰謝料や逸失利益が請求の対象となります。慰謝料は、被災者の精神的苦痛に対する補償であり、逸失利益は、被災者が将来得るはずだった収入を補償するものです。

後遺障害等級と慰謝料の相場

脊髄損傷による後遺障害等級は、その症状の重さに応じて1級から12級に分類されます。等級に応じて支給される慰謝料の金額は以下の通りです。

  • 1級: 最も重い障害が認定される場合で、慰謝料の相場は2800万円程度です。これは、完全な四肢麻痺や高度の対麻痺などが該当します。
  • 3級: 四肢の中等度の麻痺や、対麻痺が認定される場合で、慰謝料の相場は1990万円程度です。
  • 7級: 軽度の対麻痺や、一肢の高度の麻痺が認定される場合で、慰謝料の相場は1000万円程度です。
  • 12級: 軽度の運動障害や、感覚障害が残る場合で、慰謝料の相場は290万円程度です。

後遺障害等級が認定されると、それに基づいて労災保険からの給付額が決まります。等級が高いほど補償額も大きくなりますが、正しい等級を得るためには、適切な申請と十分な医学的証拠が必要です。

後遺障害等級認定の流れ

脊髄損傷による後遺障害等級認定は、以下のステップで進められます。

  1. 労災発生の申請: 労災が発生したら、速やかに労働基準監督署に申請を行います。事故証明書や医師の診断書を添えて提出します。
  2. 治療と検査の継続: 労災申請後は、症状固定(治療の効果がこれ以上期待できない状態)まで治療と検査を継続します。この期間中に後遺症が残るかどうかが見極められます。
  3. 後遺障害等級認定の申請: 症状固定が確認されたら、後遺障害等級認定のための申請を行います。医師の診断書や意見書、MRIやCTスキャンなどの画像所見を添えて提出します。
  4. 認定結果の通知: 労働基準監督署が審査を行い、後遺障害等級が認定されます。通常、申請から結果通知まで1~3か月程度かかります。
  5. 不服申立て: 認定された等級に納得できない場合は、新たな医学的証拠を用意して審査請求を行い、不服申立てを行うことが可能です。

後遺障害等級認定は、補償金額を左右する重要なステップです。適切な等級を得るためには、医学的証拠の充実と正確な手続きが不可欠です。

弁護士に相談するメリット

労災による脊髄損傷は、被災者やその家族にとって非常に大きな負担となります。法的手続きや補償の手配など、複雑な問題が多く、専門知識がないと適切な対応が難しい場合が多いです。ここで、弁護士に相談することのメリットをいくつか紹介します。

1. 療養中の対応を適切に判断できる

労災発生後、どのように治療を進めるか、どのタイミングでどの検査を受けるべきかといった判断は、後遺障害等級認定に直結します。弁護士は、被災者の状況を把握した上で、最適な治療方針をアドバイスします。また、医師との連携を図り、診断書や意見書が等級認定に有利になるようサポートします。

2. 保険給付その他の補償を十分に得られる

労災保険の補償は複雑で、どの給付を申請すべきか、どのような書類を準備すべきか、判断が難しい場合が多いです。労働災害に精通した弁護士であれば、必要な補償を最大限に得るための手続きを的確に進めることができます。特に、労災保険だけでなく、自治体の支援制度や他の公的補償制度も活用し、被災者とその家族が経済的に困窮しないようサポートします。

3. 示談交渉・訴訟対応ができる

労災による損害賠償請求は、会社側との交渉が必要となるケースが多く、特に脊髄損傷のような重篤な障害を負った場合には、示談交渉が難航することがあります。弁護士は、被災者に代わって会社との交渉を行い、適正な賠償を求めます。また、交渉が決裂した場合には、訴訟に進むこともありますが、弁護士が訴訟対応を全面的にサポートします。

4. 精神的なサポート

労災による脊髄損傷は、身体的な負担だけでなく、精神的な負担も少なくありません。弁護士に相談することで、法律的な問題だけでなく、被災者とその家族の精神的な負担を軽減することができます。法的手続きや交渉に不安を感じることなく、治療やリハビリに専念することができます。

まとめ

労災による脊髄損傷は、被災者の人生に大きな影響を与える深刻な事態です。適切な補償を受けるためには、初動対応から労災保険の申請、後遺障害等級認定、そして損害賠償請求まで、一連の手続きを正確に行うことが求められます。弁護士に相談することで、これらの手続きをスムーズに進め、最大限の補償を得ることが可能となります。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労災に関するご相談を随時受け付けております。労災事故に遭われた方や、そのご家族の方は、ぜひ一度ご相談ください。労災問題に詳しい弁護士が、最適なサポートを提供いたします。

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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