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労災に関する会社の負担の概要とポイント

労災に関する会社の負担の概要とポイント

はじめに

労災事故が発生した際、会社はどのような責任を負うことになるのでしょうか?従業員の安全を守るべき立場にある企業にとって、労災事故への対応は重要です。本記事では、労災事故が起こった際に会社が負うべき負担額やその手続きの流れ、会社としての対処法について解説します。

Q1. 労災が発生した場合、会社が負う責任はどのようなものですか?

労災が発生すると、会社は被災した従業員に対して、労災保険でカバーされる補償とは別に、損害賠償責任を負うことがあります。具体的には、従業員の負傷や死亡に伴う慰謝料や休業損害の一部を会社が負担することになります。

Q2. 労災事故における「災害補償責任」と「民事上の責任」とは?

労災事故が発生した場合、会社は大きく分けて「災害補償責任」と「民事上の責任」の2つの責任を負う可能性があります。

  • 災害補償責任: 労働基準法に基づく責任であり、従業員が業務上の災害で負傷または死亡した場合、故意・過失を問わず補償する義務があります。
  • 民事上の責任: 会社に安全配慮義務違反や過失があった場合、精神的損害(慰謝料)や労災保険でカバーされない損害について、別途賠償責任を負います。

Q3. 労災保険が補償するのは一部だけ?会社負担の実情とは?

労災保険は、従業員の治療費や休業補償の一部をカバーしますが、全てを補償するわけではありません。具体的には、休業初日から3日目までの休業損害は労災保険の対象外であり、これらの費用は会社が負担する必要があります。

また、労災保険で支払われる休業補償給付は、給付基礎日額の60%ですが、これでは被災従業員の収入が全て補償されません。従業員が被る経済的損失のうち、労災保険でカバーされない部分は、会社が負担しなければならない可能性があります。

Q4. 労災事故における「慰謝料」の取り扱いはどうなりますか?

労災保険では、従業員が負傷した際の治療費や休業補償が支払われますが、精神的苦痛に対する慰謝料は補償されません。そのため、労災事故によって従業員に精神的な苦痛を与えた場合、会社は別途慰謝料を支払う義務を負うことがあります。

Q5. 労災発生時の手続きの流れはどうなりますか?

労災が発生した場合、会社は以下の手続きに従って対応する必要があります。

  1. 労災発生の報告: 被災者の負傷状況を確認し、病院への搬送を手配した後、速やかに労働基準監督署および警察に報告します。
  2. 労働者死傷病報告書の提出: 労災が原因で従業員が4日以上休業した場合、労働基準監督署に対して労働者死傷病報告書を提出しなければなりません。休業が4日未満の場合でも、所定の期間内に報告する義務があります。
  3. 各種労災保険給付の申請: 被災した従業員からの求めに応じて、労災保険の申請手続きを支援します。労災申請は従業員自身が直接労働基準監督署に行うこともできます。
  4. 労働基準監督署による調査: 労災保険給付申請を受理した労働基準監督署は、労災の該当性について調査を行います。場合によっては、直接会社や被災者に聞き取り調査を行うことがあります。
  5. 労災保険給付の決定: 労働基準監督署による調査が完了した後、労災保険給付の支給決定または不支給決定が行われます。

Q6. 労災発生時に会社が注意すべき5つのポイントとは?

労災事故が発生した場合、会社は以下のポイントに注意することが重要です。

  1. 労基署・警察署への連絡と現場保存: 労災発生時には、直ちに労基署や警察に連絡し、現場保存を行う必要があります。証拠隠滅とみなされないよう、事故現場の状況を保存しましょう。
  2. 「労働者死傷病報告書」の提出: 死亡事故や4日以上の休業を伴う事故の場合には、労基署への報告が必要です。報告を怠ると罰則が課されることもあります。
  3. 事実に基づいた労災手続きの対応: 労災手続きにおいては、事実に基づいた内容で対応し、虚偽の記載は絶対に避けましょう。
  4. 解雇制限の遵守: 労災事故により従業員が休業している期間およびその後30日間は、会社は従業員を解雇することはできません。解雇制限についてしっかり理解しておきましょう。
  5. 過失相殺の検討: 被災した従業員にも過失がある場合、民事上の損害賠償額が減額される可能性があります。事故原因について正確に調査を行いましょう。

弁護士に相談するメリット

労災問題は、法的に複雑であり、会社としての対応に迷うことも多いです。弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。

  1. 法的なアドバイスの提供: 労災問題に精通した弁護士から、法的根拠に基づいた適切なアドバイスを受けることができます。
  2. 労基署や被災者との交渉サポート: 労基署からの調査依頼や被災者からの請求に対して、適切な対応をサポートします。
  3. 訴訟リスクの軽減: 労災事故をめぐるトラブルが発生した場合、弁護士が対応することで、訴訟リスクを軽減することができます。

まとめ

労災事故が発生した場合、会社は従業員の安全配慮義務を果たすだけでなく、必要に応じて慰謝料や休業損害などの賠償を行う義務を負います。特に、民事上の責任を負うことがあるため、会社としては日頃から安全管理を徹底し、労災事故の発生を防ぐことが重要です。また、労災事故が発生した際には、迅速かつ適切に対応することが求められます。

労災問題に関する詳しい解説は、弁護士法人長瀬総合法律事務所までご相談ください。

動画のご紹介

労災でお悩みの方に向けて、労災に関する解説動画を公開しています。ぜひご視聴ください。

【労働災害の動画のプレイリストはこちら】

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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