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労災保険と民事賠償請求の違い・関係性

はじめに

業務上・通勤上の事故や過労死で負傷・死亡した場合、被災者や遺族には労災保険(労災)からの補償を受ける権利があります。しかし、それだけで全ての損害がカバーされるわけではありません。会社に安全配慮義務違反があったり、通勤事故で第三者(加害者)の過失がある場合には、別途民事賠償請求を行い、慰謝料や逸失利益を追加で回収する道が開けるのです。

このように、労災保険の給付民事賠償金をどう使い分け、どう調整するかは、過労死や労災事故における救済を最大化する上で重要なテーマです。労災保険は先行して治療費や休業補償を受け取れる反面、慰謝料や精神的損害は対象外のため、民事賠償と併用しないと十分な補償にならないケースがあります。

本稿では、労災保険と民事賠償請求の根本的な違い(趣旨・範囲)を明らかにしながら、両者を合わせて利用する際のメリットと注意点を解説します。会社の過失や第三者の加害行為が絡む場合には、ただ労災保険で済ますのではなく、適切な損害賠償も検討し、被災者・遺族にとって最適な補償を得るためのポイントをご提供します。

Q&A

はじめに、労災保険と民事賠償請求に関してよくある疑問(Q)と回答(A)を簡潔に整理します。詳細は「3 解説」で詳述します。

Q1. 労災保険があるなら、会社に損害賠償を求めなくてもいいの?

労災保険だけでは、慰謝料逸失利益などを十分にカバーしきれない場合があります。会社に安全配慮義務違反があれば、民事賠償請求を併用することで補償を上乗せできます。

Q2. 通勤事故で相手保険会社が賠償するなら、労災保険は使わなくてもいい?

労災保険は先行して補償を受けられるメリットがありますし、相手保険から回収できる部分との調整で二重取りを避けられます。両方を賢く組み合わせて利用するのが有利です。

Q3. 労災保険と民事賠償金は二重取りになる?

一部重複する項目(治療費、休業損害など)は労災が求償権を行使します。精神的損害(慰謝料)や将来の逸失利益は労災の対象外で、被災者が会社や第三者に直接請求する形になります。

Q4. 民事賠償がもらえた場合、労災保険の給付は打ち切りになる?

原則として、労災保険法で規定された給付は打ち切りになりません。被災者が不当に得したりしないよう、一部調整が行われるにとどまります。

Q5. 弁護士に依頼すれば、両方で最大限の補償を確保できる?

労災保険民事賠償の使い分け・重複調整を弁護士が検討することで、被災者や遺族の最適な救済を実現しやすくなります。

解説

ここでは、労災保険(労災)と民事賠償の根本的な違いや、両者を組み合わせて利用する際の注意点、過労死や第三者行為災害での具体的活用例などを説明します。

労災保険と民事賠償の根本的な違い

労災保険の趣旨と対象
  • 労災保険(労働者災害補償保険)は、業務上・通勤上のケガや病気を公的保険で補償する制度。
  • 治療費(療養補償給付)休業補償給付障害補償給付遺族補償給付などがカバーされるが、精神的損害高額な逸失利益は賄いきれないことが多い。
民事賠償の趣旨と対象
  • 民法判例に基づき、会社または第三者の過失・違法行為が原因で被害を受けた場合、損害賠償を請求できる。
  • 慰謝料(精神的損害)や逸失利益(将来の収入減分)など、労災保険の対象外項目を補う側面が強い。
二重取りの調整
  • 治療費・休業補償など労災保険が先に給付した分と重複する箇所は、労災保険が相手に求償を行うなどして調整される。
  • 被災者が同一項目で重複して受け取るのは原則として不可。ただし、慰謝料逸失利益は独立した損害項目なので、労災保険と重複しない。

過労死・過労自殺での利用例

労災保険で補償される部分
  • 遺族補償給付(年金・一時金)や葬祭料が支給され、一定の生活保障が得られる。
  • しかし、慰謝料(精神的苦痛)や多大な逸失利益は労災給付だけではカバーできない場合が多い。
安全配慮義務違反の賠償

会社が長時間労働やハラスメントを放置→安全配慮義務違反。遺族が逸失利益・慰謝料を民事で請求し、数千万円〜1億円超の賠償が認められることも。

労災と民事賠償のバランス
  • 遺族補償給付で生活の基盤を確保しつつ、会社の重過失が認められるなら高額の賠償も示談・裁判で追求できる。
  • 弁護士が両者を総合的に調整して、遺族の負担を最小化する戦略を立案する。

第三者行為災害での活用

労災と相手保険会社
  • 通勤途中の交通事故などでは、労災保険が先行して治療費や休業補償を支給しつつ、加害者保険会社と示談交渉を行う。
  • 労災が負担した分は、加害者保険会社から労災保険に求償される形で調整される。
独立した損害

慰謝料や逸失利益は被災者・遺族が加害者に直接請求可能。労災保険ではカバーされない項目なので、民事賠償で追加補償を受けることが推奨される。

弁護士のサポート

保険会社は示談金を抑える傾向があるため、弁護士過失割合逸失利益計算で対抗し、公正な金額を獲得しやすくなる。

両者を併せて使う際の注意点

先行給付と後からの賠償
  • 労災保険は請求後、比較的早く治療費・休業補償を受け取れるメリットがある。一方、民事賠償の示談・裁判は時間がかかる
  • 被災者はまず労災保険で基本的な補償を得つつ、追加で損害賠償金を確保すると良い。
二重受給と求償
  • 医療費など同じ損害項目について重複補償を受ければ不当利得となるが、多くの場合、保険会社と労災が求償のやり取りを行い、被災者が混乱することは少ない。
  • ただし示談交渉では、弁護士がその調整を把握しておかないと、二重取り逆に不足補償が発生し得る。
時効に注意

労災保険には2年〜5年の時効があり、民事賠償請求にも5年(不法行為)などの時効がある。放置すると権利を失うリスクがあるため、早めの行動が肝心。

弁護士によるメリット

適正な損害項目を見逃さない

弁護士が逸失利益慰謝料などの金額を算出し、類似判例を引用して相手に請求。労災保険だけでは不足する高額部分をカバーできる。

相手保険会社・会社との交渉力
  • 保険会社や会社は、法律の専門家に対し慎重になり、低額提示を覆して増額に応じる事例が多い。
  • 被災者が独力で応じると、法的論点を知らず不当な合意に至るリスクが高い。
重複受給の複雑な調整
  • 弁護士が労災保険法民法の両面を熟知し、二重取りや不十分な補償を避ける最適な形を模索。
  • 必要に応じて監督署や保険会社とのやり取りも代理する。

弁護士に相談するメリット

  1. 早期段階で最善の戦略
    弁護士が労災保険による先行給付と民事賠償による追加補償の両方を見通し、依頼者に合ったスケジュールを立案。
    例えば「労災申請を進めながら、会社の安全配慮義務違反を立証する準備も同時進行」が可能。
  2. 複数保険会社との交渉
    第三者行為災害で加害者保険会社と交渉しつつ、労災保険の求償調整や医療保険との関係を整理。専門家でなければ対応が煩雑。
  3. 会社・保険会社の不当な低額提示に対抗
    過失割合や逸失利益における保険会社の主張が不当な場合、弁護士が裁判例や通達を提示し、法的根拠をもって増額交渉を行う。
  4. 過労死やハラスメント事案への対応
    弁護士がハラスメント録音長時間労働ログを集め、安全配慮義務違反を深く追及。会社が示談で高額解決を選択するパターンも多い。
  5. 裁判移行時のサポート
    示談が決裂した場合、弁護士が訴状を作成し、民事訴訟や労働審判などで最終的に公正な賠償を目指す。労災保険との整合も維持。

まとめ

労災保険は、業務上・通勤上の災害に対して迅速かつ基本的な補償を提供する公的保険として非常に重要な役割を担います。しかし、慰謝料大きな逸失利益などはカバーしきれず、会社の安全配慮義務違反が明白な場合や第三者行為災害で加害者がいる場合には、民事賠償請求を併用することで被災者・遺族の救済をより充実させることができます。

  1. 労災保険で基本的な治療費・休業補償などを受給
  2. 民事賠償(会社の安全配慮義務違反や第三者の過失)で慰謝料や逸失利益を追加
  3. 二重取りにならないよう弁護士が求償権や保険金の調整を行う

この流れを的確に進めるためには、監督署手続き示談交渉裁判など、各場面での専門知識と戦略が不可欠です。弁護士法人長瀬総合法律事務所などにお早めにご相談いただくことで、労災保険民事賠償を調整し、最適な補償を受け取る道筋をつくることが可能です。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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