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従業員が業務後に事故で負傷した場合の労災保険について

はじめに

労災保険は労働者が業務中や通勤中に事故や怪我をした場合に適用される保険制度です。しかし、従業員が業務終了後、自宅に帰る途中で事故に遭った場合、労災保険が適用されるかどうかについては悩まれる方が多いと思います。本記事では、通勤災害の定義や適用範囲、そして労災保険の給付について解説していきます。

Q&A 形式で学ぶ通勤災害

Q1: 従業員が業務後に自宅へ向かう途中で事故に遭った場合、労災保険は使用できますか?

A1: はい、労災保険は使用できます。ただし、通勤経路をそれることなく、合理的な経路および方法で帰宅していることが条件です。例えば、帰宅途中で飲み会に立ち寄ったり、寄り道をした場合は通勤災害と認められないことがあります。

Q2: どのようなケースで通勤災害から除外されるのですか?

A2: 通勤災害として認められない場合には、以下のようなケースがあります。

  1. 逸脱:通勤経路を業務や通勤とは関係のない目的でそれること。例:途中で観光地に立ち寄る。
  2. 中断:通勤経路上で、通勤とは関係のない行為を行うこと。例:帰宅途中に飲酒を伴う食事会に参加する。

Q3: 通勤災害が認められるかどうかの基準は何ですか?

A3: 通勤災害と認められるかどうかの判断は、移動が「合理的な経路及び方法」に基づいているかどうかが基準となります。具体的には、労働者が通常利用する交通機関(鉄道・バス・車・自転車など)を使用し、日常的な通勤経路を逸脱せずに移動していることが求められます。

1. 通勤災害とは?

通勤災害とは、労働者が通勤の途上で負傷や疾病を負った場合に適用される災害のことです(労働者災害補償保険法第7条第1項第3号)。ここでいう「通勤」とは、以下の3つの移動を指します。

  1. 住居と就業の場所との往復
  2. 就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 住居と就業場所の往復に先行・後続する住居間の往復

これらの移動を、合理的な経路及び方法で行うことが通勤災害の適用要件となります。

「合理的な経路及び方法」とは?

合理的な経路とは、通常利用される鉄道・バスなどの公共交通機関や自動車・自転車を用いる移動経路のことです。例えば、会社に届けている定期券の経路や、普段利用している通勤手段を用いることが該当します。反対に、通勤経路を逸脱したり、不適切な手段での移動は合理的とはみなされません。

2. 通勤災害から除外される場合

労災保険の適用範囲から除外される通勤災害には、以下の条件があります。

  • 逸脱:通勤途中において、業務とは無関係の目的で合理的な通勤経路を外れること。
    例:仕事帰りに映画館に立ち寄る。
  • 中断:通勤経路上において、通勤と関係のない行動をとること。
    例:帰宅途中に居酒屋で飲酒をする。

ただし、逸脱や中断が日用品の購入などのやむを得ない理由で行われた場合、最小限度の範囲内であれば、合理的な経路に戻った後の移動は再び通勤として認められます。

3. 労災保険による給付内容

通勤災害の場合でも、業務中の災害と同様の労災保険給付が行われます。具体的な給付内容としては以下のものがあります。

  • 療養補償給付:医療費の支給。
  • 休業補償給付:休業中の賃金の補償。
  • 障害補償給付:後遺障害が残った場合の補償。
  • 遺族補償給付:死亡した場合の遺族への補償。

通勤災害は業務災害と同等の補償を受けることができますが、認定基準が異なるため、事前に適用条件を確認することが重要です。

弁護士に相談するメリット

労災保険の申請や通勤災害の認定には複雑な法律の知識や手続きが必要です。そのため、専門家である弁護士に相談することで以下のメリットがあります。

  • 適切なアドバイスを受けられる:弁護士は労災保険法に精通しており、個々のケースに応じた適切な対応方法をアドバイスしてくれます。
  • 手続きの代行:労災保険の申請手続きは煩雑で時間がかかりますが、弁護士に依頼することでスムーズな手続きが可能です。
  • トラブル防止:会社との交渉や保険金の受け取りにおいて発生するトラブルを未然に防ぐことができます。

まとめ

労災保険は、労働者の業務中や通勤中の事故・怪我に対して手厚い補償を提供します。ただし、通勤災害として認定されるにはいくつかの条件がありますので、適用されるかどうかを判断する際には注意が必要です。不安な点やトラブルが生じた場合には、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が対応いたします。

動画のご紹介

労災でお悩みの方に向けて、労災に関する解説動画を公開しています。ぜひご視聴ください。

【労働災害の動画のプレイリストはこちら】

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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