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労災における指・腕・足の切断の後遺障害

はじめに

労働災害(労災)は、職場での事故や業務中の出来事によって労働者が負傷することを指します。その中でも、指や腕、足の切断という重大な事故は、被災者の生活に多大な影響を及ぼし、後遺障害が残ることが多いため、慎重な対応が必要です。このような深刻な事故において、どのような補償や損害賠償を求めることができるのかを知ることは、被災者にとって非常に重要です。

本記事では、労災における切断事故の後遺障害認定の基準や、その際に発生する損害賠償請求の手続きについて解説します。また、弁護士に相談するメリットについてもご紹介します。

労働災害(労災)とは?

労災の概要と発生する背景

労働災害とは、労働者が業務中に負った怪我や病気を指し、これは労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づいて定義されます。特に製造業や建設業など、機械を使用する職場では、労働者が誤って指や腕、足を切断するような重大な事故が発生するリスクが高まります。

労災が発生する背景には、作業手順の不備、安全対策の不足、作業員間のコミュニケーションの不良などが挙げられます。特に大型機械を扱う際には、作業の流れや使用する機械の安全性を十分に確保する必要がありますが、これが十分でない場合、重大な事故が発生することがあります。

会社の安全配慮義務

労働者を雇用する会社には、労働者が安全に働ける環境を提供する「安全配慮義務」があります。この義務は、労働者の生命や身体を危険から守るために、会社が負うべき法的責任です。例えば、作業員が機械に巻き込まれるリスクがある場合、その機械には安全装置を取り付ける必要がありますし、作業前には十分な安全教育を行う必要があります。

もし会社がこの義務を怠り、その結果として労働者が指や腕、足を切断するような事故に遭った場合、会社は「安全配慮義務違反」として、被災労働者に対して損害賠償責任を負うことになります。

労災で受けられる補償について

労災保険による補償

労災事故が発生した場合、被災者は労災保険から以下の補償を受けることができます。

  • 療養補償給付(療養給付)
    指切断、腕切断、足切断により必要となる診察、治療などの医療費が補償されます。
  • 休業補償給付(休業給付)
    治療のために労働できない場合、休業の4日目から休業期間中の賃金の一部が補償されます。
  • 傷病補償年金(傷病年金)
    治療開始から1年6か月を経過しても治癒しない場合、傷病等級に応じて補償が支給されます。
  • 障害補償給付(障害給付)
    治療が終了し、症状固定後に後遺障害等級(1~14級)が認定されると、その等級に基づき補償が支給されます。
  • 介護補償給付(介護給付)
    切断事故により後遺障害等級が1級または2級に認定され、常時介護が必要となった場合、介護費用が補償されます。

労災保険で補いきれない部分

労災保険からの給付は、基本的な補償を提供するものですが、指や腕、足の切断による後遺症が将来の仕事や生活に与える影響をすべて補うには不十分なことがあります。特に、精神的損害(慰謝料)や逸失利益(切断事故がなければ将来得られたであろう収入の損失)については、労災保険だけではまかないきれません。

指や腕や足の切断による後遺障害等級の認定

労災事故で指や腕、足を切断した場合、認定される後遺障害等級は以下の通りです。この等級によって、労災保険から支給される補償額や会社に対する損害賠償額が決定されます。

上肢の切断

  • 1級6号: 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 2級3号: 両上肢を腕関節以上で失ったもの
  • 4級4号: 1上肢を肘関節以上で失ったもの
  • 5級2号: 1上肢を腕関節以上で失ったもの
  • 3級5号: 10指を失ったもの
  • 6級7号: 1手の5指又は拇指を併せ4指を失ったもの
  • 7級6号: 1手の拇指を併せ3指又は拇指以外の4指を失ったもの
  • 8級3号: 1手の拇指を併せ2指又は拇指以外の3指を失ったもの
  • 9級8号: 1手の拇指又は拇指以外の2指を失ったもの
  • 11級9号: 1手の示指、中指又は環指を失ったもの
  • 12級8の2号: 1手の小指を失ったもの
  • 13級5号: 1手の拇指の指骨の一部を失ったもの
  • 14級6号: 1手の拇指以外の指骨の一部を失ったもの

下肢の切断

  • 1級8号: 両下肢を膝関節以上で失ったもの
  • 2級4号: 両下肢を足関節以上で失ったもの
  • 4級5号: 1下肢を膝関節以上で失ったもの
  • 5級3号: 1下肢を足関節以上で失ったもの
  • 7級8号: 足をリスフラン関節以上で失ったもの
  • 5級8号: 10趾を失ったもの
  • 8級10号: 1足の五趾を失ったもの
  • 9級10号: 1足の第1趾を併せ2趾以上を失ったもの
  • 10級8号: 1足の第1趾又は他の4趾を失ったもの
  • 12級10号: 1足の第2趾を失ったもの、第2趾を併せ2趾を失ったもの又は第3趾以下の3,2趾を失ったもの

損害賠償請求の流れと考慮すべき点

損害賠償請求の対象となる損害

労災事故で指や腕、足を切断した場合、会社に対して以下のような損害賠償を請求することが可能です。

  • 治療費・入院費
    治療や入院にかかる費用。
  • 休業損害
    治療や入院期間中に働けなかったことによる収入の損失。
  • 通院交通費
    通院にかかる交通費。
  • 装具・器具費
    切断後の日常生活を補助するための装具や器具の費用。
  • 自宅・車の改造費
    日常生活に必要な場合、自宅や自動車の改造費用。
  • 慰謝料
    精神的損害に対する補償。入通院慰謝料と後遺障害慰謝料に分かれる。
  • 逸失利益
    切断事故による将来の収入減少。

後遺障害等級と慰謝料の基準

後遺障害等級は、労災保険の給付額だけでなく、会社に対する損害賠償額にも影響します。以下に、主な後遺障害等級とその慰謝料の相場を示します。

  • 後遺障害等級1級:2800万円
  • 後遺障害等級2級:2370万円
  • 後遺障害等級3級:1990万円
  • 後遺障害等級4級:1670万円
  • 後遺障害等級5級:1400万円
  • 後遺障害等級6級:1180万円
  • 後遺障害等級7級:1000万円
  • 後遺障害等級8級:830万円
  • 後遺障害等級9級:690万円
  • 後遺障害等級10級:550万円
  • 後遺障害等級11級:420万円
  • 後遺障害等級12級:290万円
  • 後遺障害等級13級:180万円
  • 後遺障害等級14級:110万円

慰謝料の増額要因

慰謝料は一応の相場が存在しますが、以下のような状況によっては増額される場合があります。

  • 事故の状況が特に悪質であった場合
  • 会社側の過失が大きく、事故が予見可能であった場合
  • 被害者が事故により長期間の治療を必要とする場合
  • 事故によって被害者が社会的に重大な不利益を被る場合

これらの増額要因を主張するには、被災労働者側が具体的な事実を立証する必要があります。

弁護士に相談するメリット

労災に詳しい弁護士の役割

労災事故における損害賠償請求は、単なる法律知識だけでなく、医療知識や後遺障害等級に関する知識も必要です。弁護士は、これらの知識を活用して被災者が適切な補償を受けられるようサポートします。特に、慰謝料の増額要因を適切に主張し、会社との交渉や裁判において有利となるよう主張・立証をサポートします。

弁護士法人長瀬総合法律事務所の強み

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労災事故に特化した法的サービスを提供しています。特に、死亡事故や重度の後遺障害が絡む事案においては、専門性を高めた対応が可能です。被災労働者が安心して相談できる体制を整えています。

まとめ

労災事故で指や腕、足を切断するという重大な事態に直面した場合、被災者は適切な補償を受けるための知識とサポートが不可欠です。労災保険からの補償だけでは不十分な場合が多く、会社に対する損害賠償請求を行うことが必要です。特に、後遺障害が残るような事故では、将来の生活や収入に大きな影響が出るため、慰謝料や逸失利益の請求を漏れなく行うことが重要です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、こうした労災事故に精通した弁護士が、被災者の権利を守るために全力でサポートします。労災に関する問題でお困りの方は、ぜひご相談ください。

この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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